AIoTソリューションの開発で持続可能なエビ養殖を実現~AquaEasy共同創業者兼製品責任者 ソメシュ・クマール(Somesh Kumar)氏~
これまで長年続けられてきた乱獲や、気候変動による海水温の上昇などの影響で、水産資源の枯渇が世界規模で深刻化しています。さらに、世界人口の増加により食料需要が急速に増大し、特にタンパク質は、将来、供給不足に陥るのではないかと懸念されている状況です。
そこで私たちAquaEasyは、タンパク質を豊富に含み、アジアで最も多く生産されているエビの養殖に着目。その生産性を高めてより安定的な養殖生産を行うことを支援するAIoTソリューションの開発で、タンパク質不足や水産資源の課題に取り組んでいます。
エビの養殖はリスクが高いビジネスです。というのも、エビは病気にかかりやすく、養殖中の疾病で産出量の40%ほどが失われることもあるからです。
そうした被害を防ぎ、リスクを低減するためには、水質や水温、餌やりなどの生育環境を良好に保つことが非常に重要です。ところが、水中がどういう状態なのかを把握し続けることは簡単ではなく、生育環境の管理は多くの場合、勘や経験を頼りに曖昧な基準で行われてきました。
その水質管理、食欲に応じたエビの餌付けといった中核的な問題を解決するのが、私たちのAI oTソリューションです。この製品は、産業規模の技術ソリューションの構築や商業化に関して数十年の経験を持つ専門家チームによって自社開発されました。
これには高性能センサーが搭載され、活用により収獲量が最大で30%増え、収益性も大幅に向上。顧客へのアンケートによると、エビの成長が早まったとの報告もあります。養殖を“芸術”から“科学”に変えるこのソリューションは、シンガポールのほか、いまではインドネシア、ベトナムなどにも広まっています。
そんなAquaEasyを起業する前、私は、銀行や決済に関する技術開発などを10年以上行ってきました。そのころ私が携わった製品はどれも大企業向けに作られたものでしたが、AquaEasyの製品はもっと一人ひとりの生活に関わるもので、養殖で生計を立てる人たちの暮らしにいい影響を与え得る取り組みです。そうしたAquaEasyの事業に強く惹かれ、すぐにメンバーに加わりたいと思いました。
そして共同創業者兼製品責任者として入社し、製品ビジョンの確立、製品の設計・開発、さらに製品に革新を起こすプロダクトイノベーションのための戦略立案などを担当。顧客が収獲を成功させたと耳にするたびに、仕事に誇りを感じています。
持続可能な養殖を実現することで養殖業の変革を促すAquaEasyが、シンガポールの養殖業者と協力して次に取り組むのは、1平方メートルあたりのエビ収獲量の世界記録更新を目指す野心的なプロジェクトです。これからも私たちは技術を磨いてエビ養殖の生産性を向上させ、乱獲から海洋を守りながら世界のタンパク質需要を満たし、水産資源の枯渇を防ぐことに貢献していきます。