「私たちのコワーキングスペースの使命は、日本企業をもっとローカライズさせ、日本企業とシンガポール企業の関係を構築することにあります」と同氏は語っている。
シンガポール進出に苦労している日本企業も、このスペースを利用するとこで、オフィス開設にかかる高いコストを削減することができるので恩恵を受けることができると同氏は語っている。
さらに、JR東日本シンガポール自体にもこのオフィスの効果があるとしている。現在同社は、日本国内のビジネスにおいて、高齢化や人口減少など経済成長を鈍化させる問題に直面していると付け加えた。こうした日本国内の事情からJR東日本は日本国外に事業を拡大し、日本経済の活性化を狙っている状況にある。そのために新たなテクノロジーとイノベーションによる新ビジネスを創出する計画を立てているが、コワーキングスペースの開設はその計画の1つである。このアイデア自体は18か月ほど前に生まれたが、和泉氏によると、シンガポールにプラットフォームを構築する目的は、日本企業のビジネスの多様化と、海外進出に役立つ市場調査を支援することにあるとしている。
特にシンガポールは電子決済などの新テクノロジーの採用に日本よりもオープンな姿勢で臨んでおり、日本のIT企業やスタートアップがシンガポールのエコシステムから利益を得ることができると同氏は考えている。
更にOne&Coは、JR東日本が提供する企業間の関係構築と、日本政府からのサポートが受けられるという2つの特色を持つことで、他のコワーキングスペースと一線を画していると同氏は語っている。
また同社は、One&Coの開発を、大阪市が開設したスタートアップコミュニティ「大阪イノベーションハブ」と日本貿易振興機構(ジェトロ)シンガポールと協力して行っている。
こうした取り組みから、シンガポールを拠点とする企業や多国籍企業にも、日本市場を理解し、コミュニティのつながりを活用できるメリットがありそうだ。
とりわけ日本の企業文化である言葉の壁や暗黙のルールとエチケットのニュアンスが外国企業にとって障壁となるケースが多いため、One&Coは何らかの形で、シンガポール企業が日本市場の理解を深めるのを助ける役割を担うことを和泉氏は願っている。
エンタープライズ・シンガポール(ESG)によると、シンガポール企業は2000年代初頭から、サービス、不動産、物流といった伝統的な分野で日本市場に参入した。また最近では、食品、ヘルスケア、精密工学の分野への参入にも成功している。
たとえば、バクワ(Bak Kwa:肉干)チェーンの美珍香(Bee Cheng Hiang)は2016年に東京に店舗をオープンし、それから1年経たないうちに、都内に最初のダインイン・コンセプトストアを開店させた。
昨年、シンガポール経済開発庁(EDB)とESGとジェトロは、両国のスタートアップと企業のリンクを強化する覚書を締結した。
ESGで北東アジアとオセアニアを担当しているグローバルマーケットディレクタージョニー・テオ(Johnny Teo)氏は、このコワーキングスペースが「シンガポールのスタートアップが日本のディープテック・スタートアップから技術を引き出す可能性と、日本企業と提携してソリューションを開発する機会を提供している」と語った。
One&Coの敷地の約4分の1は公開イベント専用となっており、ネットワーキングセッションや講演の開催に使われる。センターの運営は日本のコワーキングソリューションプロバイダーであるCo&Coが担当する。間もなく外国語の授業も行う予定だ。
出典:ザ・ストレーツ・タイムズ