INGのアジア太平洋チーフエコノミストで研究開発本部長のロブ・カーネル(Rob Carnell)氏は「幸いにも現時点では他部門が景気の停滞を押しとどめていますが、それが維持できなくなった場合、輸出高とおそらく国内総生産(GDP)も悪影響を受けるでしょう。シンガポール金融管理庁(MAS)は、最近の実効為替レートのわずかな上昇について再検討する必要があるだろう」とビジネスタイムズ紙に語っています。
シンガポールの製造業は、エレクトロニクス、化学、バイオメディカル、精密エンジニアリング、輸送エンジニアリング、一般製造などに分かれています。エレクトロニクスには半導体のほかに、コンピュータ周辺機器、データストレージ、情報通信機器・家電機器、その他の電子モジュールおよびコンポーネントといった部門があります。半導体はエレクトロニクスの他部門よりも周期的に浮き沈みが発生しやすい傾向があり、この変動によるダメージを緩和する1つの方法は、半導体から他の電子部品に生産をシフトすることです。しかし、SIMグローバルエデュケーション校のシニア講師であるタン・カイブーン(Tan Khay Boon)博士は、それは研究開発への多額の投資と長期的なコミットメントが必要となるだろうと注意喚起をしたうえで、「エレクトロニクス業界の変動による影響を緩和するには、医療技術やエンジニアリングなど製造業の他分野に移行する方が効果的かもしれない」と言います。
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の東南アジア・インド担当チーフエコノミストでシンガポールを拠点としているサンジャイ・マトゥール(Sanjay Mathur)氏は、韓国や台湾などの半導体メーカーを見ると、需要と価格の条件に脆弱であることがわかると指摘し、「安定した成長率を維持するには、雇用をもたらす他の産業が発展する必要があります。両国とも、サービス部門は比較的発展していません」と述べました。
近年のシンガポールの経済成長は、より多くのサービス部門を網羅するようになっています。タン博士は、サービス部門へのさらなる転換は製造業の空洞化を招く恐れがあると懸念しています。
ユナイテッド・オーバーシーズ銀行のエコノミスト、フランシス・タン(Francis Tan)氏は、現在の半導体の低迷は「サービス部門の成長例を見ると、さほど深刻に捉える必要はないように思う」と語りました。しかしながら、半導体部門の長期ブル相場は今後の「構造的な上昇傾向」を予測するものだとし、スマートフォン販売が苦戦したとしても、IoTデバイスなど電化製品に対する需要は依然としてあると述べました。