【アワード受賞者】
- AGCはシンガポールのBreathless Studiosを選出:AI(人工知能)画像解析によるガラス分別
- アルケマは日本のエマルションフローテクノロジーズを選出:リチウムイオン電池からレアアースを回収、リサイクルする技術を開発
- ASLマリーン・ホールディングスは日本のAC Biodeを選出:環境に配慮した効率的なケミカルリサイクル用触媒を開発
- 三井化学はシンガポールのRainforestを選出:マタニティ・子ども用品に樹脂素材を応用
- NTT DOCOMO ASIAはシンガポールのAccredifyを選出:ブロックチェーンによる、検証可能なクレデンシャルを使用して、さまざまな場面に対応する認証ソリューションを提供
商船三井や日本郵船は既に協業をスタート
上記の二つの取り組み以外にも、日本とシンガポール間では、ビジネスや技術における協力が盛んに行われてきた。
例えば、近年では、大手海運会社の商船三井とシンガポールの海運系スタートアップPyxis Maritimeが2023年11月、海運業界を取り巻く環境意識の高まりに対応するため、シンガポール域内での電気推進船(EV船)の事業化に向けた協業に合意した。主にEV船の共同研究・開発・建造や、日本でのEV船導入拡大に向けたマーケティングなどに注力していく。
海運会社としてさまざまなノウハウを培ってきた商船三井と、スタートアップ企業ならではの柔軟な発想力と意思決定スピードを持つPyxisのコラボレーションに、各方面から注目が集まっている。
また、大手海運会社の日本郵船とシンガポールで海事産業の脱炭素化を目指す非営利団体Global Centre for Maritime Decarbonisationは2024年6月、バイオ燃料が船の設備に与える影響について調査を開始した。
バイオ燃料は既存の船舶用エンジンや燃料供給設備をそのまま利用できるうえ、温室効果ガスの排出を削減する有力な手段とされている。これまでにさまざまなバイオ燃料の試験が行われてきたが、主に燃料特性と温室効果ガスの排出削減効果に焦点が当てられてきた。そこで同プロジェクトでは、日本郵船が運航する自動車専用運搬船でバイオ燃料を6カ月間継続使用し、バイオ燃料がエンジン性能や燃料供給システムに与える影響について調査する。
経済団体の関西経済連合会、JR東日本のシンガポール現地法人であるJR東日本東南アジア事業開発、不動産会社の阪急阪神不動産もタッグを組む。シンガポールと関西双方のイノベーション創出を目指した連携協力に関する協定を2023年12月に締結した。
具体的には、シンガポールに専任のアドバイザーを設置し、コワーキングスペースの提供やシンガポールの企業紹介などを行う。同様に、関西でもスタートアップ支援施設でシンガポールスタートアップ企業を受け入れるとともに、企業紹介などの支援をしていく。シンガポール・関西それぞれで、ビジネスコミュニティ形成の促進を図り、両者を結ぶ新たなビジネスチャンスの創出を目指す。
パートナーシップが課題をチャンスに変える
気候変動やAIの台頭など、世界は刻一刻と変化している。こうした状況において、イノベーションや戦略的パートナーシップは、アジアの成長の重要な原動力となるだろう。2024年5月、ガン・キムヨン(Gan Kim Yong)副首相は日本経済新聞社主催の国際会議である日経フォーラム第29回「アジアの未来」で以下のように述べている。
「過去数十年にわたり、アジアは目覚ましい成長を遂げてきました。世界のGDPに占めるアジアの割合は、1980年代の約20%から現在では45%へと2倍以上に増加しています」
「私たちはいま、不確実で複雑な世界に生きています。この荒波と不確実性をいかにうまく乗り切るかが、私たちの子どもや孫たちの未来を左右するでしょう。簡単な解決策はありませんが、アジアのダイナミズムと、機敏なパートナーシップ、ダイナミックな成長、包括的な開発への取り組みが相まって、私たちはこの不確実な時代を乗り切り、課題をチャンスに変え、アジアのリーダーシップを確固たるものにし、より強く、より豊かになることでしょう」
今回紹介した取り組みは、日本とシンガポール、そしてアジア経済のさらなる発展に貢献するだろう。