多様な産業の投資拡大で固定資産投資額が約6.3%増
2024年、EDBが管轄する国内外の企業による固定資産投資額(設備・インフラへの投資計画額)は135億SGD(約1兆5,120億円)となった。
そのうち111億SGD(約1兆2,432億円)を占めたのが製造業で、とりわけ半導体やバイオメディカル分野が大きく貢献した。さらに、医療技術、特殊化学、航空宇宙、デジタル分野などの主要な製造・サービス産業に加え、精密医療、人工知能(AI)、持続可能な製品・サービスといった新たな成長分野も含まれた。
一方、年間総事業費(人件費や研究開発費など企業がシンガポールでの事業運営に支出する計画額)は、84億SGD(約9,408億円)と高い水準を維持した。特に、テクノロジー企業の本社機能の運営費に関する投資が牽引役となった。国外からの投資額を地域別で見ると、アメリカ、ヨーロッパ、中国の順となり、シンガポールがグローバル企業のハブ及びR&D拠点として機能していることを示す結果となった。
<日本企業の事例>
総合印刷会社のTOPPANホールディングスは、2026年の稼働を目指し、シンガポールで半導体パッケージ基板の工場の建設を進めている。
化学メーカーのクラレも、同じくシンガポールで2026年末の稼働を目指し、食品包装などに広く使われるEVOH樹脂の生産工場を建設すると発表した。
既存企業と新規企業が積極投資
全体として投資企業には、シンガポールで既存の事業を拡大する企業と、新規進出する企業の両方が含まれている。グローバル企業の本社機能設置・拡大、研究開発、イノベーション活動への関心が高まっており、世界中のスタートアップや起業家がシンガポールで新たなビジネスを立ち上げる動きも加速していることがうかがえる。
そして、これらの投資コミットメントが実現した場合、5年間で1万8,700人の雇用と、年間235億SGD(約2兆6,320億円)の付加価値を生み出すと見込まれている。雇用については、主にサービス業、製造業、研究開発、イノベーションの分野で創出されると予想され、そのうち、約3分の2が月額給与5,000 SGD(約56万円)以上の職種になる見込みである。
<日本企業の事例>
総合飲料・食品メーカーのアサヒグループホールディングスは、シンガポールに設立した子会社にグループ全体の調達機能を集約し、2024年1月に業務を開始した。
ゼネコンの大林組は2024年4月、アジア地域の研究開発拠点として、シンガポールに「Obayashi Construction-Tech Lab Singapore」を開設した。
また、中外製薬のシンガポールの研究拠点「Chugai Pharmabody Research」は、2024年2月に事業期間の期限が撤廃され、研究所の機能を拡充したうえで、恒久的な海外創薬研究拠点として活動することが決定した。