半導体産業の成長を支援する魅力的な投資先シンガポール
世界規模の半導体企業が、シンガポールに進出するのはなぜなのか。シンガポール経済開発庁(EDB)のタン・コンフィ(Tan Kong Hwee)副次官によると、シンガポールのビジネスに適した環境、政治的安定性、熟練した労働力、将来を見据えた規制などが魅力となり、価値の高い製品をグローバルに製造し輸出する拠点として、シンガポールが選ばれているという。シンガポールは、企業が自信を持って投資できる場所なのである。
例えば、シンガポールは多くの国々とFTA(自由貿易協定)ネットワークを築いている。輸出入先を多角化することによってより多くの企業が生産拠点を多様化し、より強靭かつ俊敏なサプライチェーンを構築できるよう尽力してきたのだ。
新型コロナウイルスの世界的な流行のピーク時でさえ、シンガポールは半導体工場とその主要サプライヤーの事業継続のために、資材、設備、製品の自由な流通を確保するよう配慮した。
半導体不足の問題が顕在化する前から、半導体産業の成長を強力に支援する取り組みも行われた。大規模な半導体製造プロジェクトに必要とされる、振動試験済みの工場用地、電気・工業用水の整備など、必要なインフラを確保するための先行投資を続けてきた。一方で、シンガポールの半導体産業をが持続可能にするため、エネルギー供給構成の多様化を推進。2035年までにシンガポールの発電能力の約3分の1、最大4ギガワットの低炭素電力の輸入を目指している。
EDBとESG(エンタープライズシンガポール)、民間セクターの三者協定である、「東南アジア製造アライアンス(SMA)」も設立。シンガポールと東南アジア地域への投資に関心がある企業に対し、さまざまな地域の補完的な利点を組み合わせ、東南アジアでの生産拠点の拡大、サプライチェーンの多様化を支援している。
ろ過・分離・精製技術の先進企業である米Pall Corporationも、シンガポールに進出する一社だ。シンガポールに先端半導体製造用のろ過ソリューションを提供する最新の製造施設を建設する計画が進行中で、2022年8月には起工式が行われた。これは世界的な半導体需要に対応することを目的としたもので、設備投資額は1億米ドル(約1308億円)にものぼるという。
社長のナレシュ・ナラシムハン(Naresh Narasimhan)氏は、「アジア太平洋地域(APAC)は、今日、世界の半導体市場の大部分を占めており、まもなく他の市場を凌駕すると予想しています」と述べ、シンガポールの新たな製造施設が、域内顧客の地域ハブとして機能することに期待を寄せる。
さらに、シンガポールは、熟練した人材を活用した能力開発にも力を入れている。エレクトロニクス産業の主要なサブセクターを形成しているシンガポールの半導体業界では現在、5万9000人以上の従業員を雇用し、今後5年間でさらに約5200人増加すると予想している。より多くの学生が卒業時に半導体産業に進むことを奨励するため、EDBは企業、業界団体、教育機関と協働して、学生のためのキャリアフェア、工場訪問、半導体啓発週間の実施や、トレーニングプログラムなどに取り組んでいる。今後はシンガポール人だけでなく、グローバルな人材の確保にも力を入れていく予定である。