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ウイングアーク1st株式会社:“データの見える化”で東南アジアの成長を目指すウイングアーク1st株式会社

ウイングアーク1st株式会社:“データの見える化”で東南アジアの成長を目指すウイングアーク1st株式会社

“データの見える化”で東南アジアの成長を目指すウイングアーク1st株式会社


新型コロナウィルスの世界的な拡大によってデジタル化の波が一気に加速している。他者との社会的距離が求められるニューノーマルの時代では、これまでリアルや対人によって行われていた分野のデジタル化が進み、先行するAIやIoTといったデジタル化はさらに加速する。

今後あらゆる分野でデジタル化が進む中、その中心的な基盤を担う存在がデータだ。AIもIoTも進化の源がデータであり、収集したビッグデータをどう分析して使うかが成長のカギとなる。今回はそんなデジタル化とデータ活用で企業を支援するウイングアーク1st株式会社(以下、ウイングアーク)シンガポール法人のマネージングダイレクター山本修平氏に同社のビジネスインテリジェンス(BI)ビジネスについてお話を伺った。

高速データベースとデータの“見える化”で経営支援

ウイングアークは、帳票とBI関連のビジネスを展開するソフトウェア企業だ。企業におけるあらゆる文書を管理する帳票ソリューションでは国内トップシェアを誇る。そしてもう一つの柱として、同社が注力している分野がDr.SumとMotionBoardという二つのソリューションを提供しているBIビジネスだ。山本氏は次のように語っている。「Dr.Sumは世界最速の処理速度を誇るデータベースで、MotionBoardはデータの分析と見える化を行い、分析結果やアラートによって使う人にさまざまな気づきを与えてくれるダッシュボードです」。この二つのBIツールを使うことでデータの収集から管理、分析までリアルタイムにパフォーマンス高くデータ活用できるのがウイングアークのBIツールの特長だ。中でもMotionBoardは、複数のデータソースを集約し、リアルタイムに可視化する能力があり、あらゆる種類のデータを可視化してしまう。この“データの見える化”とは企業活動にさまざまなメリットをもたらす。「データの可視化のいい点は過去と現在の状態を一目瞭然にすることで経営の次の一手が打てること。リアルタイムにビジネスの改善、改良を行い、売上の向上やコスト削減のための、アクションを実施できるようになります」と山本氏は語る。
 

東南アジア進出のきっかけは現地日系企業からの要望

ウイングアークが自社の成長戦略として取り組んでいるのが海外での事業拡大だ。中でも東南アジア市場は成長戦略の柱の一つである。同社がシンガポール法人を設立したのが2014年。もともと帳票ソリューションで国内トップシェアを誇るウイングアークは、日本企業が東南アジアへ進出する際に、現地でも日本と同じようなサポートをしてほしいという要望から海外展開を行ってきた。今ではシンガポールを拠点にマレーシア、インドネシア、ベトナム、タイ、フィリピンと6カ国でビジネスを展開している。こうした経緯からウイングアークのBIビジネスは広がりを見せ、現地進出の日本企業を中心に、現在ではローカルの企業にも着々と導入が進んでいる。山本氏は現地でのBIツールの活用状況について次のように語っている。「日系企業ではシンガポールやマレーシア、インドネシア、フィリピンなど自動車メーカーや電機メーカーなど製造業を中心に導入が進んでいます。例えば製造業では生産ラインが製造、組立、インスペクションと各ラインの工程や目的が異なります。各工程をIoT化し生産に関する大量のデータを収集、MotionBoardを使用することで各ラインの現状を一目瞭然に把握することができます。この生産の稼働監視によって万が一の場合は異常を検知しアラートを通知することができます。そして、継続的なカイゼン活動に活用することでコスト削減と生産性の向上につなげられるのです」。
 

シンガポール企業のデータ駆動型業務ソリューションで協業

ウイングアークはAI企業と連携することで主力製品の価値を活かしている。その代表的な一例がシンガポールのデータアナリティクスベンダー「Azendian Solutions Pte.Ltd.(以下Azendian)」社との事業提携だ。「Azendian」はデータアナリティクスに強みを持ち、主に大学向けの教育ソリューションと、ビルや不動産の温室効果ガスを削減する次世代型スマートビルディングソリューションを提供している。ちなみに「Azendian」は2019年にシンガポールの行政機関であるLand Transport Authorityが主催したコンテスト「Singapore Mobility Challenge」において、イノベーティブ企業として優勝している企業だ。「Azendian」との提携について山本氏は次のように語っている。「Azendian社の事業ではデータ可視化の分野で協業しています。例えば、大学向けソリューションではスタッフと先生に対して生徒の成績を分析し未来予測を含むデータを可視化するダッシュボードを提供しています」。

新型コロナウィルスで新たなソリューションも提供

ウイングアークのデジタルソリューションは、新型コロナウィルスの拡大でシンガポールでも導入する機会が拡大しているという。またリモートワーク時代の新たなソリューションの提供も始めている。「シンガポール政府はデジタル化を推進する認定ソリューションを公表しており、弊社においても中小企業でもスモールスタートで、紙のデジタル化・文書管理が可能なサービスであるSPAを利用できるクラウドサービスを提供しています。また、BI以外でも新たなソリューションを提供開始しました。例えば、リモートワークが進む中で、これまで紙で出力していた請求書をWEB配信するというソリューションです」。この新サービスSVF TransPrintは、ペーパレス化を促進する請求書Web配信サービスでこれまでオフィスに行かなければできなかった業務の課題を解決するのが目的だ。現在、日本でも導入が進んでおり、東南アジアもデジタル化の流れが進むことから新サービスとして提供していく。

シンガポールの強みを活かした今後の戦略

ウイングアークの今後の成長戦略にとって、シンガポールはその中心的な存在として位置づけられている。それは東南アジア全体のGDPの成長性だけではなく、シンガポールのイノベーション主導型の経済戦略が大きく影響している。今後の同社の展望について山本氏は次のように語ってくれた。「東南アジアではここ10年で約4000社のスタートアップが生まれています。そしてシンガポール政府がイノベーション主導型の経済成長を行っているため、そのうちの1700社近くがシンガポールにあります。私たちはこうしたスタートアップをターゲットに、テクノロジーを供給して、成長を促進し、私たちも一緒に成長していきたいと考えています。そしてその結果シンガポールや東南アジアへの貢献にもつなげられるのではないかと考えています」。また、「シンガポールが東南アジアの中心であるという地の利もありますが、何よりもシンガポールの人たちは日本や日本人に対して親日で、同じアジア人として、ビジネスしたいという共感性が高いと感じています。一緒にビジネスを作るということが前向きにできる。シンガポールで成功モデルを作りそこからマレーシアやインドネシアやベトナムといった周辺諸国への横展開を行うこともできます」。シンガポールを基点にウイングアークのBIツールが東南アジアの経済成長を支える未来が見えそうだ。

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