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シェフ・ヤマシタ

シェフ・ヤマシタ

シンガポールで浸透する日本のお菓子「シェフ・ヤマシタ」山下シェフが語るシンガポールの仕事と暮らし


日本では新型コロナウィルスによる外出自粛が続く中、自宅でのお菓子作りのニーズが増えているが、こうした状況はシンガポールでも同様のようだ。特に日本のケーキや和菓子などが人気で、現地でのお祝い事も日本のデコレーションケーキや焼菓子などでお祝いすることも多いという。

今回はシンガポール中心部タンジョンパガーの公営住宅内で洋菓子店「シェフ・ヤマシタ」を経営する山下昌孝シェフ(以下、山下シェフ)に、シンガポールでの仕事や現地での暮らしについてお話しを伺った。

山下シェフがシンガポールに夫妻で洋菓子店をオープンさせたのが2014年、お菓子作りの経歴は専門学校時代を入れると約35年。シンガポールにはもともとなじみがあったが進出するきっかけは知り合いのシンガポール進出のお手伝いだった。「辻調理師専門学校を卒業後、岡山で修業し2001年に出身地の奈良でオープンしました。2007年に知り合いがシンガポールでお店を立ち上げようという話があり、新たな挑戦がしたいと思いシンガポールにわたったのがきっかけです。その後2014年に自身のお店をオープンしました」。
現在、お客さんの7割以上がシンガポールの地元の方々で、日本で食べられるのと同じケーキが人気となっている。シンガポールのケーキは甘く、大人数のパーティで食べるといったシンガポール独自の文化があるようだが、山下シェフの日本スタイルのケーキは多くの現地の人々に受け入れていくれている。
また、仕事でも現地のスタッフが活躍している。製菓学校を卒業したケーキ職人をはじめ、デリバリー、セールス、経理など多彩なスタッフが業務を行っている。「スタッフはシンガポール人が5名にマレーシア人が2名です。インターンシップで就職した方や、うちのケーキを食べて美味しいからそのまま働いている方もいる。スタッフも皆親しみやすくとても働きやすいですね」と山下シェフは語る。

山下シェフはまた、シンガポール人向けに日本のお菓子作りに関するレシピ本も数多く出版している。「レシピ本は2012年に初めて出版しました。当時は日本のケーキ屋さんがシンガポールにはなく、生クリームを使ったイチゴのショートケーキのようなものが珍しかった時代です。出版社からのご依頼で日本のケーキを紹介したいということから始まりました。」レシピ本の出版は、シンガポール最大の飲料&食品大手のフレイザー・アンド・ニーヴ(F&N)傘下の出版社マーシャル・キャベンディッシュからの依頼で行ったものだ。同社のリディア氏は「日本のお菓子作りに興味があり、2012年に山下シェフに料理本を出したいと声をかけました。山下シェフの最初の料理本では、ケーキだけでなく、クッキー、パイ、タルト、プリンなどのレシピを幅広く掲載しました。山下シェフのレシピ本は現在5冊出ていますが、その中でも特にご好評をいただいているのが、実物の本と電子書籍です。シンガポールの自粛期間中、国立図書館の電子書籍の貸出が急増しましたが、貸出タイトルのトップ5には、和風ケーキとデザートの作り方が掲載されている山下シェフのレシピ本『たのしい』シリーズなどがあります。」と語っている。また、「シェフ・ヤマシタ」では、シンガポールに進出する小売店、明治屋とも長年パートナー関係を築いている。「明治屋さんとは10年以上の付き合いで、店頭やイベント会場での販売など、シンガポールに進出してから継続してケーキを販売しています」。

山下シェフのお店は、自身の自宅がある公団住宅の1階に位置しており、公団や付近の住民たちとも顔馴染みだ。山下シェフは英語が得意ではないが、日常的に近所の住民たちから声を掛けられ、温かい交流があるという。時には、エレベーターですれ違った住民からケーキの予約を受けることもあるそうだ。「お店がある公団住宅に住んでいますが、シンガポールの方々はとてもフランクで気軽に声を掛け合える関係です。皆さん顔見知りで、とても親しみやすいです」。また、共に移住した奥様も現地の生活にはすっかり溶け込んでおり、仕事仲間と家族ぐるみの付き合いで、ホームパーティーをすることもある。今ではすっかり現地の生活に溶け込んでいるようだ。
最後に、山下シェフはシンガポールの魅力をこう語る。「シンガポールは治安がよくとても安全で、暮らすのも安心です。また気候が常に一定で過ごしやすい。シンガポールの生活をずっと続けたいですね」

現地でのシェフとしての活躍や生活など、シンガポールに溶け込んだ山下シェフの活動はこちらにて公開しているインタビュー動画でもご覧になれます。

 

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