5
すべての人に希望と幸福感を届けたい——資生堂の150年にわたるビューティーイノベーションとこれから

すべての人に希望と幸福感を届けたい——資生堂の150年にわたるビューティーイノベーションとこれから

BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD——このミッションのもと、よりよい世界を目指してビューティーイノベーションを巻き起こしてきた資生堂が、150周年を迎えた。シンガポールにアジア太平洋地域の本社を設置したのは2016年のこと。以来、同社はこの地でどのような活動を展開してきたのか。節目のいま、資生堂アジアパシフィック社長兼CEOのニコル・タン(Nicole Tan)氏とともに、資生堂のこれまでを振り返り、改めてブランドの意義や目的を伝える。


ニコル・タン(Nicole Tan)氏 資生堂アジアパシフィック社長兼 CEO

ニコル・タン(Nicole Tan)氏 資生堂アジアパシフィック社長兼 CEO

ビューティーイノベーションを通じ生涯のしあわせに貢献

売上高ランキング国内No. 1、世界で名を轟かすグローバルビューティーカンパニーである資生堂。同社の美に対する解釈とその思想は、この巨大なブランドを大きく特徴づけている。

“美しさとは、人のしあわせを願うこと。”——これが、資生堂の150周年キャンペーンのコピーだ。そして、同社のあらゆる活動のベースには“美の力を通じて、一人ひとりの生涯にわたるしあわせに貢献する企業であり続けたい”という思いが貫かれる。ニコル・タン氏はこう語る。

「私たちは独自の研究や生活者との密接な交流から、化粧は見た目を美しく引き立てる役割を超えて、気分を明るく安定させるなど、心理的にもいい影響を与えることを知っています。そういった技術を生かし、弊社は単に化粧品を売るだけでなく、関わるすべての人に希望や幸福感を届けていきたいと考えています」
 


肌の深い悩みを化粧の力でカバーする「SLQM」の取り組み

そのミッションを体現する重要な取り組みの一つに「資生堂ライフクオリティーメイクアップ(SLQM)」がある。これは、肌に深い悩みがある人を化粧の力で支援する活動で、第二次世界大戦で火傷を負った人のケアからスタート。その後、あざや白斑、がん治療などによる見た目の変化など、肌の深い悩みを持つ人にも役立てられるようになった。

SLQMでは、独自の光による色補正効果により、自然な仕上がりを実現するベースメイクシリーズ「パーフェクトカバー」が活用されている。パーフェクトカバーは長い年月をかけて研究されたテクノロジーで、従来のファンデーションではカバーしきれなかった肌の悩みを解消する。ニコル・タン氏は「SLQMを通じて、病気などによって外見が変わってしまった人たちが肌の悩みにとらわれることなく、すべての人が外見も内面もベストな状態で、自分らしくいきいきと人生を送れるようになることを望んでいます」と力を込める。
 


資生堂がシンガポールを地域拠点に選んだ理由

そんなSLQMの相談窓口を担い、専門のメイクアップコンサルタントが1対1のカウンセリングを提供する「資生堂ライフクオリティービューティーセンター(SLQC)」は、アジア太平洋地域の本社を置くシンガポールでも運営されている。

アジアの主要市場に近いシンガポールに拠点を置くことで、アジア地域におけるより深い生活者インサイトの収集、マーケティングのローカライズが可能に。そして何よりも、迅速に意思決定やその実行ができるようになり、アジアの顧客に愛されるサービスの提供を実現しているのだという。

そのことについて、ニコル・タン氏は次のように説明する。
「シンガポールはさまざまなバックグラウンドの方が暮らす国で、多様な生活者層を抱えています。そのため、アジアの生活者が新たに何を求めているのか、どのようなニーズがあるのかをより身近に感じ、生活者に貢献するものを生み出す実験場としても最適です。そして、そんなさまざまな人が集まるシンガポールの生活者層の多様性は、私たちの研究とイノベーションにとって非常に有効なものです」

さらに同社は、アジアの生活者を対象とする新製品の開発に最前線で取り組む施設、「資生堂アジアパシフィックイノベーションセンター(APIC)」の拠点もシンガポールに置いている。

APICでは、製品のみならず新技術の開発も行われ、技術開発においては、外部の研究グループや企業と積極的に連携。例えば、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)とは、皮膚研究の分野で長期的に共同研究を進めているという。

「シンガポールにアジア太平洋地域の本社を設立したのは2016年のことです。シンガポールは資生堂にとって、この地域初の進出先であるとともに、製品の改良や新しいプロジェクトを生み出す実験場として最適で、ここにイノベーションセンターを置くのは理に適ったことでした」(ニコル・タン氏)

また、シンガポールの研究環境とビジネス環境についてこう語る。
「弊社にとってアジアは、最大の成長の可能性を持つ大きい市場で、東南アジアの中心に位置するシンガポールは、そのアジア各地へのアクセスが良好です。また、シンガポールには、世界中から優良な企業が集積し、ビジネスパートナーや投資会社などとつながってエコシステムを形成しています。さらに、官民学連携で新製品やアイデアを開発できる環境や、優秀で多様な人材などさまざまなビジネスインフラが整っていることなども魅力です」
 

Content Image 1


シンガポールで初公開される150周年記念の新プロジェクト「SHI」

1872年の創業から、歴史と伝統を守りながらも、SLQMやAPICなどを通じ、未来を見据えたイノベーションを続ける資生堂。世界へとみるみる活躍の場を拡大し、今年で150周年を迎える。

シンガポールでは現在、150周年を記念したプロジェクトが進行中だ。そのプロジェクトとは、「SHI」という名のバーチャルアンバサダーの立ち上げで、アジア太平洋地域初のデジタルアンバサダーとして、シンガポールのチームによって構想、制作された。

具体的にSHI は、InstagramやSpotifyなどのソーシャルプラットフォームを活用して、美容、ライフスタイル、旅などに関するコンテンツや、資生堂の伝統にまつわるストーリーを発信し、世界中の人々に自信と前向きな気持ち、そして健康を呼び起こすことを目指していく。

華やかな節目を迎えた今、ニコル・タン氏は改めてこう意気込みを語る。
「歴史を振り返ると、私たちは創業当初から、美容を通じて生活者、そして社会に貢献することを目指していたのだとわかります。私たちは企業理念『BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でより良い世界を)』のもと、弊社の製品やサービスによって、誰もが心身ともに健やかで美しく、前向きに日々を過ごせる社会の実現を目指し、これからも革新を続けていきます」
 

Shiseido researchers using technology to create new beauty solutions as part of the Shiseido Life Quality Makeup initiative (Photo Credit: Shiseido)

Shiseido researchers using technology to create new beauty solutions as part of the Shiseido Life Quality Makeup initiative (Photo Credit: Shiseido)

関連記事

Subscribe now icon
シンガポールの最新ビジネス情報やニュースをメールで無料でお届けします。