資生堂がシンガポールを地域拠点に選んだ理由
そんなSLQMの相談窓口を担い、専門のメイクアップコンサルタントが1対1のカウンセリングを提供する「資生堂ライフクオリティービューティーセンター(SLQC)」は、アジア太平洋地域の本社を置くシンガポールでも運営されている。
アジアの主要市場に近いシンガポールに拠点を置くことで、アジア地域におけるより深い生活者インサイトの収集、マーケティングのローカライズが可能に。そして何よりも、迅速に意思決定やその実行ができるようになり、アジアの顧客に愛されるサービスの提供を実現しているのだという。
そのことについて、ニコル・タン氏は次のように説明する。
「シンガポールはさまざまなバックグラウンドの方が暮らす国で、多様な生活者層を抱えています。そのため、アジアの生活者が新たに何を求めているのか、どのようなニーズがあるのかをより身近に感じ、生活者に貢献するものを生み出す実験場としても最適です。そして、そんなさまざまな人が集まるシンガポールの生活者層の多様性は、私たちの研究とイノベーションにとって非常に有効なものです」
さらに同社は、アジアの生活者を対象とする新製品の開発に最前線で取り組む施設、「資生堂アジアパシフィックイノベーションセンター(APIC)」の拠点もシンガポールに置いている。
APICでは、製品のみならず新技術の開発も行われ、技術開発においては、外部の研究グループや企業と積極的に連携。例えば、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)とは、皮膚研究の分野で長期的に共同研究を進めているという。
「シンガポールにアジア太平洋地域の本社を設立したのは2016年のことです。シンガポールは資生堂にとって、この地域初の進出先であるとともに、製品の改良や新しいプロジェクトを生み出す実験場として最適で、ここにイノベーションセンターを置くのは理に適ったことでした」(ニコル・タン氏)
また、シンガポールの研究環境とビジネス環境についてこう語る。
「弊社にとってアジアは、最大の成長の可能性を持つ大きい市場で、東南アジアの中心に位置するシンガポールは、そのアジア各地へのアクセスが良好です。また、シンガポールには、世界中から優良な企業が集積し、ビジネスパートナーや投資会社などとつながってエコシステムを形成しています。さらに、官民学連携で新製品やアイデアを開発できる環境や、優秀で多様な人材などさまざまなビジネスインフラが整っていることなども魅力です」