シンガポールでは、政府がビジネスリーダーや事業者団体、商工会議所、組合を結集して将来の経済を構築し、企業の成功を助け、より良い雇用を創出している。財務大臣でもあるヘン副首相は、同社がテクノロジーにおけるイノベーションと利益効果を行うことで、シンガポール経済に大きく貢献しているエネルギー・化学産業の好例だと述べている。
同社の最新で最初のメチオニン工場である「Twin」は、2014年に生産を開始し、シンガポールにおいて100人を超える雇用を生み出している。同副首相によると、この工場で雇用された人材は検査技師やプロセス技術者にはじまり、メンテナンスや環境、安全、健康分野のエンジニアにまで及ぶ。
長年にわたり、シンガポールにおける同社の成長は、他の新たな種類の非製造業の仕事も生み出している。例えば、3Dプリンティングやその他の最先端分野の開発に取り組む科学者や研究者などだ。
この新たな投資はアジアにおける成長の機会、すなわち持続可能な栄養と食の安全を確保するためのイノベーションの重要性を反映していると述べている。
また、ヘン副首相は、アジアの食肉と魚介類の需要が2050年までに78%増加し、また、同年までに世界の人口は98億人に達し、世界の食糧安全保障はますます差し迫った問題になると述べている。
同時に、耕作地と作物の収穫高は、気候変動のために減少している。そして持続可能な方法で食料と栄養のニーズを満たすという課題に対処するには、新しく革新的な手段が必要であると付け加えている。
例えば、動物の飼料にメチオニンなどの飼料添加物を加えることで、栄養価を高め、増大する食肉需要を満たすのに役立てることができる。また、メチオニンは大豆ミールに置き換えることができ、アンモニアの放出と硝酸塩の使用を減らすのに役立てられる。
同社にとって、アジアはメチオニンの最大の成長市場であり、その需要は毎年約7%増加している。
同社のニュートリション&ケア部門の取締役会長であるヨハン・カスパー・ガメリン(Johann-Casper Gammelin)氏は次のように述べている。「アジアで成長する顧客の豊かさが、拡大する動物性タンパク質の需要を支えている」。
「一方で、生産者は卵や牛乳、魚のより持続可能な生産に、ますます焦点を当てている」と同会長は付け加えており、これらの努力を支援する上での同社のメチオニンの役割に注目が集まっている。
シンガポールにおけるエボニックの両工場の合計投資金額は10億ユーロ(約1180億円)に上っており、単一の投資としては最大規模になる。
また、シンガポールを投資先として選択した理由について、シンガポールの物流と貿易ハブとしての立地条件や、優秀な労働力と人材を手軽に確保できる点、更には政治的安定性などがあると同社のアジア・パシフィック・サウスリージョンの代表ピーター・マインツハウゼン(Peter Meinshausen)氏は記者発表で述べている。
また、同氏は、2030年までに世界の化学産業の半分以上がアジアに集中し、中国が主要マーケットにあると付け加えている。
一方、同社の最高経営責任者クリスチャン・クウマン(Christian Kullmann)氏は、記者会見で米中貿易紛争の影響について尋ねられ、貿易の混乱が自動車関連産業と中国の建設の成長を鈍化させたと述べている。しかし、鈍化した成長パフォーマンスが今年の後半には回復すると予想していると付け加えている。
中国当局が4月に発表した反ダンピング調査では、中国はエボニックの日本、マレーシア、シンガポール法人のアミノ酸メチオニンの輸入を開始しており、カルマン氏は、貿易戦争の問題が解決されることへの表れであると自信を表明している。この調査は1年続き、2020年4月10日までに完了する予定とのことだ。
出典:ザ・ストレーツ・タイムズ