テオ・チーヒエン(Teo Chee Hean)国家安全保障担当の上級大臣兼調整大臣は2019年12月、同社従業員500人が働く予定の同拠点の開所式で、「今日、トタルとシンガポールのパートナーシップにもう一つのマイルストーンが示された」と話し、次のように述べた。
「この開設は、トタルがシンガポールで著しい成長を遂げたこと、そして私たちのパートナーシップにコミットしていることの証だ」
石油貿易と潤滑油製品販売で1982年に創業し国際的なオイル・ガス会社となった同社は、石油化学製品の小売および石油製品と関連サービスの販売によりシンガポール国内でその存在感を着実に拡大してきた。
トゥアス地域のシンガポール・リューブ・パーク(Singapore Lube Park)にあるトタルの潤滑油混合プラントは、同社の世界最大かつ最も近代的な工場だ。
「探索・生産、ガス、再生可能エネルギー・電力、精錬・化学製品、マーケティング・サービス、貿易・輸送、トタル・グローバル・サービス(Total Global Services)を含む多様な事業について、シンガポールは魅力的なビジネスの地かつ人材ハブであると、私たちはずっと確信している。トタルの新しい地域本社はその証だ」と、トタル・アジア太平洋社長兼最高経営責任者であり、カントリー・チェア・シンガポールも務めるクリスチャン・カブロル(Christian Cabrol)氏は述べた。
トタルが最近シンガポールで行ったベンチャーとして同大臣が挙げた例には、液化天然ガス(LNG)燃料補給エコシステムを構築することを目的としたシンガポールのパビリオン・エナジー(Pavilion Energy)と同社のパートナーシップや、インドでのLNG供給・販売を目的とした同社とアダニ・グループ(Adani Group)のパートナーシップが含まれる。
トタルは第2位の民間のグローバルLNG企業であり、世界で10%の市場シェアを持つ。
同社は全世界の市場でLNGを販売するとともに、中東、アフリカ、米国、オーストラリアの液化プラントに出資している。
船舶への燃料補給用の高硫黄燃油に代わるものとしてLNGをいち早く提供した国の一つがシンガポールだと、同大臣は述べた。
国際海事機関(International Maritime Organisation)の規制により、船舶用燃料の硫黄含有量の世界的上限が3.5%から2020年1月に0.5%へと引き下げられた。LNGへの切り替えは、輸送会社の規制順守に役立つだろう。
これまでシンガポールはタンカーやトラックを使って170隻の船舶にLNGを供給した実績があり、同国初のLNG燃料船が2020年第3四半期に完成する予定だと同大臣は語った。
その燃料船により船舶用燃料としてのLNGを大型船に供給できるようになると、同大臣は付け加えた。
同大臣によれば、トタルがシンガポールに参入したねらいは、同国のエネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの割合を拡大することだ。
トゥアス地域にある同社の潤滑油プラントは操業に必要なエネルギーの35%を太陽エネルギーで賄うための設備を有し、これにより年間CO2排出量を最大528メートルトン抑制する。
シンガポールは、2030年までに太陽エネルギーを最大2ギガワット供給するという野心的目標を最近、発表した。これは、現在のシンガポールの最大日間電力需要の約10%に相当する。
同大臣は次のように述べた。「私たちはさらに、規制の簡素化およびイノベーションと研究開発の促進を通して、再生可能エネルギーに移行する会社を支援する予定だ」
トタルにとって、シンガポールはアジアにおける再生可能エネルギービジネスのハブでもある。
トタル・ソーラー・ディストリビューテッド・ジェネレーション(Total Solar Distributed Generation)の完全子会社であるトタル・ソーラー・DG・サウスウエスト・アジア(Total Solar DG Southeast Asia)を通して、同グループは東南アジアの法人・産業顧客向け完全統合ソーラー・ソリューションを手がける大手国際プロバイダの一つとなっている。
2019年初めに、トタルの子会社のハッチンソンSA(Hutchinson SA)は、「アジア向けデジタル・リサーチ・ラボ(Digital Research Lab for Asia)」を設立した。そこでは10人超のデータサイエンティストとIoTエンジニアが在籍し、自動車・航空宇宙産業向けに革新的なゴムや熱可塑性プラスチックを使った製品ソリューションの展開に取り組んでいる。
トタル地域本社の開設は、同社がアジアにおける活動の戦略的ハブとしてシンガポールを信頼していることの表れだと同大臣は述べた。
「シンガポールにおける同社のプレゼンスによって、ビジネス、イノベーション、研究開発の発展をもたらす道筋を探求するためのより多くの機会が広がると私は期待している。それにより、皆が力を合わせて革新的かつ持続可能なエネルギー産業を確立し、世界的な気候変動対策への解決策を提供できるだろう」
出典:ストレーツタイムズ