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アジアの技術拠点としての地位を確立するシンガポール

アジアの技術拠点としての地位を確立するシンガポール

グーグル、オラクル、アップルなど、世界を揺り動かす企業を多数輩出してきたシリコンバレーが持つ「地理」「技術分野の人材」「タイミング」「幸運」といった要素を再現できる確実な方法はありません。しかし、次のイノベーションの中心となる地を見つけたいと願うビジネスリーダーならば、野心あふれる人材やベンチャーキャピタルを代々シリコンバレーに惹きつけてきたものと同様な要素を持つ場所を探求する必要があります。


世界中の数多くの企業がその探求の末にたどり着く地が、シンガポールなのです。

かつて活気のない漁村だった小さな島国が、今では東南アジアの中心地、有望な技術拠点として台頭しています。ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)CEOのメグ・ホイットマン(Meg Whitman)氏がシンガポールを「ミニチュアシリコンバレー」と形容するほどです。現在、世界のテクノロジー企業トップ100社のうち80社が拠点を置くシンガポールは、東西取引の中心地としての地位を確立し、収益性の高いアジア市場への玄関口となっています。

なぜシンガポールはグローバルに活動する大手テクノロジー企業にとって非常に魅力的な場所なのでしょうか。さまざまな企業が挙げる、シンガポールでビジネスをすることの4つの主な利点をご紹介します。
 


世界屈指のイノベーション

企業がそうであるように、シンガポールも技術の飛躍的進歩を追求しています。発明と革新はビジネス文化の不可欠な要素です。ここシンガポールでは、グローバル企業と新興企業が多くのプロジェクトで連携しており、アナリストの注目を集めています。2017年のグローバルイノベーション指数において、シンガポールはアジアで最も革新的な国に選ばれ、2017年のブルームバーグイノベーション指数ではシンガポールは世界6位にランク付けされました。アマゾンやIBMのような企業が画期的な新規プロジェクトをグローバル展開する前にシンガポールでパイロット試験を行う大きな理由がそこにあります。
 


即時対応、最新のITインフラ

シンガポールではプラグアンドプレイのビジネス環境が整備されているため、テクノロジー企業は即座に業務を開始できるとともに、世界最先端の技術によるITインフラへのアクセスもできます。実際、シンガポールは、エコノミスト・インテリジェンス・ユニットによる最新のアジアデジタル変換指数のデジタル・インフラ部門で第1位に選ばれているのです。企業はそのインフラを活用でき、Wi-Fiネットワークを設定するとすぐに新製品のテストや試験運用を簡単に行うことができます。

 

厳格な知的財産保護

テクノロジー企業にとって、知的財産(IP)は何よりも重要です。アジアでは日和見主義の企業が手っ取り早く利益を得ようと他社の技術イノベーションを盗用するケースが多々あります。しかしシンガポールではIP法が厳しい上に入念に実施されています。シンガポール政府によって強力なIP規制枠組みへの取り組みが行われているため、企業は研究開発への投資が保護されるという安心感を得ることができます。世界経済フォーラムによると、シンガポールは知的財産権保護に関してアジア第1位、世界第4位です。
 

豊富な高度技術者の人材プール

ビジネスを成功させたいのであれば技術だけでは限界があります。本当に差を生み出すことができるのは、そこで働く人々です。シンガポールでは十分な教育を受け高度な技術を持つアジア屈指の人材プールを活用できます。最新のグローバル人材競争力指数においてシンガポールは世界第2位となり、アジア諸国で唯一トップ10に入りました。また、シンガポールには多様な国々の人が集まっており、欧米諸国にとってアジアで最も馴染みやすい国の一つです。シンガポールの4つの公用語の1つである英語が広く話されているため文化や言語での障壁もほとんどなく、欧米企業の管理者は人材をスムーズに適応させることができます。

これらの利点から総合的に、アジアでの足場を確立・拡大したいIT企業やテクノロジー企業にとって、シンガポールはほぼ完璧なインキュベーターとなっています。次の各社の例でもそのことが示されています。

2017年5月、ヒューレット・パッカード(HPE)はシンガポールに新社屋を建設し、シンガポール経済開発庁(EDB)が支援するアクセラレータープロジェクトのイノベートネクストを開始するなど、1億4,000万USD(148億4,000万円)を投じました。現在同社はシンガポールで1,600名を雇用しており、今後さらに追加される予定です。HPEシンガポールの副社長兼マネージングディレクターのロー・カイペン(Loh Khai Peng)氏は「シンガポールでの当社の歴史は、初めてここに事務所を構えた1970年に遡ります。それ以来、政府が積極的に共同イノベーションを推進し、技術によって国の未来を加速させる取り組みに注力していることから、継続して投資を行ってきました」と語っています。

企業のITツールキットにおいて最も重要なコンポーネントの1つとなっている、オープンソースソフトウェア構成管理システムを開発するパペットは、急速に成長し、今年初めにアジア太平洋地域と日本にサービスを提供する新しい地域本部をシンガポールに開設しました。シンガポールを選んだ理由について、同社CEOのサンジャイ・ミルチャンダニ(Sanjay Mirchandani)氏は、最も魅力的なのは優れた人材へのアクセスだと言います。

サイバーセキュリティ企業のパロアルトネットワークは、最も重要なオフィスの1つをシンガポールに構えています。同社は2009年に初めてシンガポールに事務所を開設し、2014年にシンガポールに地域本社を設立、2017年3月にはAPAC本部を立ち上げました。同社シンガポール・マレーシア地域担当長のアルヴィン・タン(Alvin Tan)氏は、欧米企業にとってアジアへの進出は容易ではなくまた費用がかかることを実感する一方、どのような懸念よりも得られる利点の方が勝るとし、シンガポールは「人、プロセス、テクノロジーが見事に融合した」次世代ハイテク人材の宝庫だと語りました。

 

確立した地位とさらなる飛躍

ベルリン、ストックホルム、サンフランシスコ。これらの都市は、新規ビジネス立ち上げの場所として世界で最も人気のある都市として広く認識されています。しかし、独ベルリンに本社を置く調査会社ネストピックが実施した2017年スタートアップ企業の設立に適した都市ランキングにおいて、シンガポールはこれら全ての都市(およびソウル、上海、北京を含む80の都市)を上回りました。

イノベーションを促進するための高度なITインフラと企業を支援するエコシステム、即時活用できる高度な教育を受けた若い技術者と高度なソフトウェアエンジニアの人材プール、そしてアジア太平洋地域の活気ある技術市場への地理的近さ。新興企業にとってシンガポールが魅力的であるこれらの要素は、アジアでの事業基盤を確立したい企業リーダーにとっても同様に魅力的です。

シンガポールにオフィスを構えている大小グローバル企業はその製品やサービスと同様に多種多様ですが、共通点が1つあります。それは、シンガポールを技術と起業家精神のアジア拠点として見なしていることです。

アジアへの進出・拡大、あるいは世界を変える新しいベンチャー事業の創出を実現したい方は、ぜひご自身でシンガポールをよく見てみてください。きっと驚くような発見があるでしょう。

 

出典:シンガポール経済開発庁(EDB)

https://www.edb.gov.sg/en/news-and-resources/insights/innovation/singapore-flexes-its-standing-as-asias-technology-capital.html

1米ドル(USD)=106円(2018年3月22日現在)

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