ステップ1 適切なビジネス形態の選択
シンガポールで事業を始める際には、多様なビジネス形態から選択できる。
法人格を有せず、個人または法人が単独の責任で事業を行う「個人事業体」や、2〜20人のパートナーが共同で責任を負って事業を行う「パートナーシップ」、法人格を持ち、2人以上のパートナーが有限責任のもと事業を行う「リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ(LLP)」、法人格を持ち、会社の構成員は、会社の債務および損失に対して責任を負わない「会社」など、新会社を設立する形態には6種類がある。
さらにそのほかの選択肢として、例えば日本企業を親会社としてシンガポールに子会社を設立する「現地法人設立」、日本企業を親会社としてシンガポールに支店を設立する「支店設立」などがあり、事業者は適切な形態を選ぶことで、ビジネスを効率的に展開できる。
ステップ2 会社の設立
ビジネス形態が決まれば、次に会社名を申請する。企業登記を管轄する政府機関であるACRA(Accounting & Corporate Regulatory Authority)のポータルサイト「BizFile+」からオンラインでの申請が可能で、承認は早ければ数分、他の政府機関の承認や審査が必要な場合でも14日〜2カ月で得られる。
その後、承認を得た会社名、登記住所、事業内容などの情報や書類をそろえ、ACRAに対し会社設立の登記を行う。この申請もBizFile+で行うことができ、情報や書類に不備がなければ15分程度で会社の登録が完了する。そのスピードが示すように、シンガポールでは会社の立ち上げが非常に簡潔だ。
なお、登記の手数料はビジネス形態により異なり、個人事業体で115SGD(約1万3,000円)〜、会社で315 SGD(約3万6,000円)となっている。
ステップ3 ビジネスの運営
東南アジア最多となる日系企業87社が統括拠点を構えるシンガポール注1に会社を設立したら、いよいよ事業の運営が始まる。その活動を行う場であるビジネススペースのうち、大規模な企業オフィスは「セントラルビジネス地区(CBD)」に集中している。CBDはシンガポールの金融・商業の中心地で、事業の成長に向け、他社とのネットワークや協業を促す環境が整っている。
また、小規模なスペースである「サービスオフィス」や、共同でオフィスを利用する「コワーキングスペース」、さらに、産業関係者間で協業することができる「ビジネスパーク」もある。郊外に複数あるビジネスパークは、成長分野の企業が集まる「ワンノース」、先進製造業の拠点が集まる「ジュロン・イノベーション地区(JID)」、シンガポール初のスマート地区である「プンゴルデジタル地区(PDD)」などが代表的だ。
一方、事業に欠かせない銀行口座については、シンガポールはアジア太平洋地域の金融の中心地であることから、600社を超える金融機関が本拠地を構える。きめ細かなサービスを提供する地元銀行や国際的な大手銀行など多様な金融機関が、企業のあらゆるニーズに対応している。
金融について、法務や税務に関して専門的な助言や支援を必要とする場合、事業者は、アドバイザリーサービスを提供するサービスプロバイダーにサポートを求めることができる。
例えば、法律サービスに対応するシンガポール国内の法律事務所は1,100社を超えるなどサービスプロバイダーは豊富で、シンガポール経済開発庁(EDB)はそのネットワークを整備することで、企業のシンガポールへのスムーズな進出をサポートしている。
その他、人材の採用や税制、ユーティリティなどについて、詳しくは『シンガポール進出の手引き』にまとめられている。
注1: 日本貿易振興機構(ジェトロ)「2023年度 アジア大洋州地域における日系企業の地域統括機能調査報告書」参照