シンガポールのローレンス・ウォン財務大臣は2024年2月16日、国会の予算案演説の場において、同国への投資奨励策の一環として、付加価値の高い実体的な経済活動を対象とした返金可能投資クレジット制度を新たに導入することを発表した。
還付を伴うこの税額控除制度は、シンガポールが競争力を維持し、適切なノウハウを持つグローバル企業からの投資を誘致するのに貢献すると、ウォン財務大臣は説明した。
RICは、シンガポールの主要な経済セクターと新たな成長分野に対し、大規模な投資を行う企業を支援する目的で設けられた制度である。
支援対象となる投資活動には、生産能力の向上のための製造施設新設、デジタルサービス業務設立・拡大、本社業務の設立・展開などが含まれる。
その他、コモディティ取引会社の設立または業務拡大、新しいイノベーション活動および研究開発、グリーン移行を支援する活動なども挙げられる。
ウォン財務大臣は、RICおよびその他の投資奨励策を支援するため政府は、国家生産性基金(National Productivity Fund)に今年20億シンガポールドルを追加拠出する見込みであることも発表した。
シンガポール経済開発庁(EDB)およびシンガポール企業庁(ESG)は、最長10年にわたる期間のあいだ、対象プロジェクトに対して企業が負担した支出を基にRICを承認することを計画している。
対象となる支出はプロジェクトの種類によって異なり、例として、設備投資、人件費、研修費、専門家報酬および無形資産などが含まれる。
このクレジットは、法人所得税と相殺される。利用されなかったクレジットは、会社がクレジットの付与条件を満たした時点から4年以内に現金で還付される。
同制度の新設に至った理由は、世界各国の政府が投資誘致のために莫大な補助金を打ち出し、投資をめぐる競争が激化していることが背景にあると、ウォン財務大臣は説明している。
また、「我が国には、主要国との"争奪戦"を繰り広げる余裕はありません。しかし、立ち尽くして何もしないわけにはいかないのです」とも付け加えた。
RICの詳細については、今年第3四半期までにEDBおよびEnterpriseSGのウェブサイトに公開される予定だ。
また、予算案演説のなかでウォン財務大臣は、シンガポール企業のコスト管理を支援する13億シンガポールドル相当の新たな支援パッケージ等を用意していることについても発表した。
「企業支援パッケージ(Enterprise Support Package)」と称するこの政策パッケージは、法人税減税、企業融資スキーム(Enterprise Financing Scheme: EFS)の強化、スキルズフューチャー・エンタープライズ・クレジットの拡張で構成されている。
これにより各企業は、2024年の賦課年度において4万シンガポールドルを上限に50%の税額控除を受けられる。