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シンガポールの文化・ビジネス習慣って?―生活や仕事に役立つ基礎知識

シンガポールの文化・ビジネス習慣って?―生活や仕事に役立つ基礎知識

駐在や出張などでシンガポールに滞在する際、生活や仕事をスムーズに行うためのお役立ち情報を、現地で暮らす日本人の視点からご紹介します。今回は、シンガポールで日本人のビジネス展開をサポートするプラットフォーム「One&Co」のGeneral Managerで、東南アジアでの戦略PRなどを支援する「N9 PTE LTD」の代表を務める伊藤隆彦氏に、シンガポールの文化やビジネス習慣について実体験を交えてお話しいただきました。

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Q:シンガポールで暮らす人々の行動様式についてどのような印象をお持ちですか? 

A:シンガポールは、多民族国家ならではのダイバーシティが日常生活やビジネスに溶け込んでいると感じます。そして、それが新規事業やコラボレーションの土壌となっているように思います。また、テクノロジーの活用が進んでいることも特徴で、デジタル身分証明、キャッシュレス決済、公共交通機関でのクレジットカード利用など、日常生活がデジタル化しています。 
 

Q:シンガポールの4つの公用語(英語・マレー語・中国語・タミル語)はどのように使い分けられているのでしょう? 

A:シンガポールでは、英語が公共やビジネスの場で広く使われています。多くの日本人駐在員も英語で打ち合わせをしたり、ネットワーキングに参加したりしています。他の公用語であるマレー語、中国語、タミル語は、それぞれの民族の人たちの間での使用が一般的です。そうした言語の使い分けが多民族国家としての文化や歴史の多様性を守り、シンガポール社会の調和を支えているのだと感じています。  
 

Q:お気に入りの“シングリッシュ”のフレーズは? 

A:「OK lah」というフレーズが好きです。「lah」が加わることで軽やかなニュアンスが生まれ、コミュニケーションが親しみやすい雰囲気になります。最初はブロークンな英語のように感じましたが、英語にマレー語や中国語の要素が混ざり合ったシングリッシュというネイティブな話し言葉なのだと知り、シンガポールらしい独自のスタイルを反映していると感じるようになりました。  
 

「One&Co」オープニングの模様

「One&Co」オープニングの模様


ご存じですか?

人口約600万の小さな都市国家・シンガポールには、中華系、マレー系、インド系、ユーラシアン、プラナカンなどさまざまな民族がともに暮らします。各民族は英語とともに母国語を使い、言語間で相互に影響を受けることから、英語に他の言語の要素が混ざった“シングリッシュ”が生まれました。
 

Q:現地で仕事をする際に知っておくと役立つビジネスマナーについて、3つほど教えてください。

A:1つめが、シンガポールでは意見をはっきり伝えることが重視されるということです。あいまいな表現は避け、相手が理解しやすいよう意図を明確に伝えることが大切です。 

2つめが、短期間で転職を重ね職務経験を積むジョブホッピングが一般的で、人材の流動性が高いシンガポールでは、キャリアアップやスキル獲得を重視した人材育成が求められるということ。日本以上に社員に明確な成長プランを提示して、社員の定着を図ることが必要になります。

3つめが、シンガポールのビジネス環境は多国籍で多文化であり、異なる価値観や文化的背景を尊重する姿勢が不可欠だということです。この姿勢がチーム内での円滑なコミュニケーションや協力を促します。  
 

Q:シンガポールで友人をつくったり交流を深めたりする際におすすめの場所やイベントは?  

 A:私が支援している「One&Co」をぜひおすすめしたいです。日本の企業やスタートアップが集うコワーキングスペースで、さまざまな業界のプロフェッショナルと交流できる場です。異文化交流やビジネスのネットワークを築くために最適な環境だと思います。 

また、東南アジアでの事業展開を支援する日本企業向けのコミュニティーに「JSIP」というものがあります。定期的にイベントや勉強会を開催していて、志を同じくする仲間と知り合い、情報交換や協業の機会を得ることができます。

あとは、シンガポールでは、毎日のようにグローバルなカンファレンスやミートアップが行われているので、そうしたイベントへの参加は、最新の情報を得たり、新たな人脈を築いたりする絶好の機会となります。  
 

 Q:日常的に使っている便利なアプリやサービスがあれば教えてください。 

A:ライドシェアアプリ「Grab」を、タクシーの予約やフードデリバリーで利用しています。手配が簡単で、日常生活に欠かせない存在です。 また、オンラインショッピングでキャッシュバックが得られるアプリ「ShopBack」を使い、買い物をよりお得にし、節約に役立てています。 もう一つが、政府提供のデジタル認証アプリの「SingPass」です。各種行政サービスにスマートフォンからアクセスでき、書類提出や申請もオンラインで完結できるため、手間を大幅に削減できます。 


ご存じですか?

シンガポールは2014年に国家戦略「Smart Nation」を発表して以来、社会全体のデジタル化を推進してきました。ライフスタイルに関連する便利なデジタルツールやサービスも数多く導入され、例えばシンガポールの国営図書館では、スマートフォンアプリで貸し出しや、自宅での電子書籍やオーディオブックのダウンロードが可能です。
 

Q:シンガポールのどのようなところを特に気に入っていますか? 今後シンガポールで暮らす方々へのアドバイスやメッセージもお願いします。

A:イノベーションとダイバーシティが当たり前にある日常に魅力を感じ、日々感銘を受けています。シンガポールは、多国籍企業やスタートアップが集まるグローバルビジネスエコシステムとして急速に成長を続けています。そのため、社会に溶け込むためにも、柔軟性と好奇心を持って現地の文化や人々を理解し、接することをおすすめします。 

また、シンガポールでの生活やビジネスには、「0→1」だけでなく、「−1→0」のプロセスが不可欠だと感じています。文化的なギャップや認識の壁を乗り越え、信頼関係を築くことが、すべての基盤となります。この基盤が整ってこそ、イノベーションやコラボレーションのきっかけが生まれ、持続的な成果を生み出すことができるのではないかと思います。 
 

 伊藤 隆彦 

1977年、愛知県生まれ、シンガポール在住歴5年。2019年、JR東日本グループが事業主体となるイノベーションプラットフォーム「One&Co」の立ち上げを主導し、現在もGeneral Managerとして日本とシンガポールをつなぐ取り組みに従事。さらに、「N9 PTE LTD」の代表として、日本、シンガポール、東南アジアを舞台に戦略PR、クリエイティブ、イベント制作を支援する活動を行っている。 

Profile image

One&Co General Manager
N9 PTE LTD 
代表 伊藤隆彦氏 

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