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GSKのマイク・クライトン地域社長が語る、優秀なローカルチームのつくり方

GSKのマイク・クライトン地域社長が語る、優秀なローカルチームのつくり方

多国籍企業からスタートアップまで、あらゆる企業からパートナーとして選ばれているシンガポールには、世界から優秀な人材が集まっている。シンガポールに進出する企業はこの地で、実際にどのように人材を活用し、ビジネスを優位に展開しているのか。シリーズ最初の今回は、グラクソ・スミスクライン(GSK)を取り上げる。

GSKのマイク・クライトン地域社長が語る、優秀なローカルチームのつくり方

GSKのRegional President for Greater China and Intercontinentalであるマイク・クライトン(Mike Crichton)氏は2018年にシンガポールに移住したばかりだが、現地の人々のように屋台で食事をしたり、シンガポールを代表するコーヒー「コピ(Kopi)」を愛飲したりと、シンガポールの文化にすっかり馴染んでいる。Roche、AstraZeneca、Novartisといった医薬品メーカーの製薬部門で働いてきた経験を持つクライトン氏が、シンガポールのグローバル人材コミュニティの一員となり、影響力を発揮している。そこで、アジアの成長におけるシンガポールの役割に期待を寄せる理由と、チャンスをつかむためのチームづくりについて聞いた。

GSK Mike

Q: あなたの役割について教えてください。

A: GSKは、科学、技術、才能を結集し、病気を克服することを目的とするグローバルバイオファーマ企業です。今後10年間で、ワクチン、特効薬、一般薬によって、25億人の健康に貢献すること、そして、GSKの従業員が活躍できる会社にすることを目指しています。

私は現在、9つのマーケットを管轄しています。7,500人以上の社員を率いて、地域の患者様に医薬品やワクチンをお届けすることが主な役割です。「戦略」と「実行」の両方に時間を割き、例えば、満たされていない医療ニーズはないか、医薬品やワクチンをより早く患者様に届ける方法はないかなどを、チームと協力して常に探したり考えたりしています。目標達成を共に目指すビジネスパートナーとの関係を築いていくことも欠かせません。毎日変化があるので、とても楽しいです。

Q: GSKがシンガポールに進出した理由について教えてください。

A: GSKは1959年にシンガポールに拠点をつくりました。グローバルヘルスケア企業の中では、最初にシンガポールに進出した企業です。小さな営業所からスタートした私たちは、25億SGD(約2,500億円)以上の投資を行い、シンガポールの医療システムとバイオメディカル・サイエンス産業に最も貢献する企業の一つに成長しました。現在、新興市場およびアジア太平洋地域のバイオ医薬品事業の地域本部であるAsia Houseと製造拠点だけでも、シンガポール内のグローバル、リージョナル、ローカルの各ビジネスユニットで、1500人以上の従業員を雇用しています。

私たちがシンガポールに進出したのにはいくつかの戦略的な理由があります。まず、シンガポールには素晴らしいビジネス環境が整っています。ビジネスとイノベーションを推進する政策、高度なインフラ、確立された法律と知的財産制度。そして、非常に高いスキルを持つ労働力や、国内外の才能ある人材を惹きつける魅力があるのです。また、地理的に、アジア全域の市場へのアクセスが容易なのも重要なポイントです。

シンガポールでの事業展開で、私が誇りに思うことの一つが、GSKの製造拠点です。例えば、シンガポールの南西部に位置する工業地域ジュロンでは、常に最先端の製造技術を導入し、多くの新薬の製造が、他のグローバル拠点よりも早く、まずはここからスタートします。また、西部のトゥアスでは、小児死亡の原因となる世界中の疾患のうち、約45%をカバーするワクチンを2種類製造しています。これは、当社のグローバル・ヘルス・アジェンダにも大きく寄与しています。

シンガポールには、当社のグローバルビジネスおよび地域事業の本部が多く置かれています。これは、重要な意思決定がシンガポールで行われ、その決定が、世界各国の支部のオペレーションにも影響を与えることを意味します。

 

Q: シンガポールでのチームづくりを検討している企業に対して、アドバイスはありますか。

A: 現在、シンガポールのGSK Asia Houseでは、40近くの国籍の方が働いています。本当に、多様な人材が集まっているのです。私は、さまざまなバックグラウンドを持つ人材が集まることはとても重要だと考えています。なぜなら、私が担当する地域は非常に多様で、GSKの社員は、当社のサービスを多種多様な患者様やお客様へ提供する必要があるからです。シンガポールの人々の素晴らしいところは、もともと国際的な視点を備えていることです。彼らは国際都市シンガポールで育まれ、高い適応力が養われています。そのため、異なる文化や国籍の人々と、スムーズに意思疎通ができるのです。

シンガポールにチームをつくることは、企業にとって賢明な選択だといえます。シンガポールは、先述の通りビジネスがしやすいうえに、他の市場へのアクセスや、関係性も良好です。魅力的なグローバル人材と、簡単に接点を持つこともできるでしょう。私の個人的なアドバイスとしては、現地で強力な人事チームをつくることをお勧めします。

 

Q: シンガポールのビジネスエコシステムは、どのような点でメリットがあると思いますか。

A: なんといっても、世界最高峰の人たちと交流できることでしょう。私を例にとると、各国企業のCEO、慈善団体の代表、大臣、そして国内外の素晴らしい才能の持ち主などに会うことができました。とても幸運だと思っています。シンガポールは国際的なハブであり、多くの企業の地域本部があるため、自分が慣れ親しんできた業界だけではなく、多種多様な業種に触れることができるのです。

GSK Mike

Q: 実際にシンガポールに住んでみて、住み心地などはいかがですか。

A: 私は、シンガポールの屋台街でローカルコーヒー「コピ」を買うのが大好きなんです。そこで毎日働いているおじさんやおばさんには、いつも深い尊敬を抱いています。

新型コロナウイルスのパンデミックのときもシンガポールにいましたが、シンガポール政府の対応には感心させられました。政府がワクチン接種と、革新的な治療法の調達に注力したことで、近隣諸国よりもはるかに早く他国と行き来できるようになったのです。私の職務では、世界各国のビジネスの動向を把握しておくことが常に欠かせません。市場を訪問するために、国内外をスムーズに移動できたことはありがたかったです。

そのほかにも、シンガポールは安全で清潔、交通の便が良いです。また、世界最高水準の医療体制が整い、多くの国の医療モデルにもなっています。さらに、多様性に富んでいて、さまざまな文化が融合されている点も、私は気に入っています。

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