ケルビン・テオ氏
共同創設者兼 CEO
Funding Societies | Modalku
現在、世界の裕福な国々はそうでない国々より急速に進化しています。裕福な国では資金調達をしやすかったり、優れたテクノロジーやデジタルツールにアクセスしやすかったりするためです。こうした格差を解消するために、シンガポールに拠点を構える企業は、テクノロジーを有効活用し、十分なサービスを受けられないコミュニティに新たな機会を創り出そうとしています。
2022/12/13
共同創設者兼 CEO
Funding Societies | Modalku
グループ CEO
ADERA Global Smart Tech
SAPの アジア太平洋日本地域プレジデント
SAP
創設者兼 CEO
Kacific Broadband Satellites
歴史を通じてイノベーションはパラダイムシフトを推進してきました。電気が夜を昼に変え、印刷機がマスコミュニケーションをもたらし、電話が異なる大陸にいる人々をつなぎました。
現在、世界の裕福な国々はそうでない国々より急速に進化しています。国民が資金調達をしやすかったり、優れたテクノロジーやデジタルツールにアクセスしやすかったりするためです。こうした不平等に対処するために、シンガポールを拠点とするいくつかの企業が、同国の支援エコシステムに頼りながら、テクノロジーを有効に活用して東南アジアにおける格差を埋めようとしています。
その取り組み対象には小規模企業と消費者の両方が含まれています。ADERA Globalの生体認証技術は、この地域の銀行取引やデジタル決済を安全で確実、かつ使いやすいものに変え、ASEAN 諸国に住む成人人口の 70% という多数派を占める、銀行口座を持たなかったり、持てなかったりする人々に対応します。
中小企業向けのデジタル金融プラットフォームであるFunding Societies | Modalkuは、十分な金融サービス提供を受けておらず、資金調達へのアクセスが限られていることが多い東南アジアの中小企業に融資への公平なアクセスを提供しています。そうすることで中小企業は経済成長を続け雇用創出を推進することができます。
SAP の 4W Wizard ツールは、機械学習、対話型人工知能(AI)、自然言語処理を統合してデータ処理を自動化し、アジア太平洋地域における人道援助活動の時間を大幅に節約します。さらに、Kacific Broadband Satellites Groupは宇宙空間に衛星を打ち上げ、260 の医療施設、学校、コミュニティハブを含む、社会から取り残された地域に高速インターネットを提供しています。
Funding Societies | Modalkuの共同創設者兼 CEO であるケルビン・テオ(Kelvin Teo)氏、ADERA Global Smart Techのグループ CEO であるアンソニー・オン(Anthony Ong)氏、SAPの アジア太平洋日本地域プレジデントであるポール・マリオット(Paul Marriott) 氏、Kacific Broadband Satellitesの創設者兼 CEO であるクリスチャン・パトロー(Christian Patouraux)氏が、インターネットへの平等なアクセスが世界経済にどのような影響をもたらすかについて、ビジョンを共有しました。
(以下、敬称略)
パトロー:私たちは、ビジネスには世の中を良くする力があると信じています。サービスが不十分な地域でインターネット接続を向上するという当社の取り組みによって、質の高い医療、教育、公共サービスなどの基本的なニーズを満たせるようになります。
オン:私たちの夢は、誰もが、どこでも、いつでも、基本的な銀行サービスや金融サービスを利用できるようにすることです。当社では、デジタルバンキング、マイクロファイナンス、金融施設などの金融サービスを、銀行口座を持たなかったり、持てなかったりする人々に提供したいと考えています。私たちにはそうした人たちを置き去りにしないよう、インクルーシブな金融を確立すべきだという信念があります。
テオ:当社のビジョンは、中小企業に資金を提供することでビジネスの潜在力を発揮してもらい、東南アジアにおいてよりインクルーシブな金融を実現することです。この国の経済のバックボーンを形成しているのはそうした企業なので、世界的な競争力を持つ先進的な中小企業の強力な基盤を作ることで、レジリエントで革新的で、成長力のある経済を創出できると考えています。
マリオットSAP の目的は、テクノロジーを使用してより良い世界を作り、人々の生活を向上させることです。私たちは、デジタルトランスフォーメーションや、AI、クラウド、インテリジェントなビジネスネットワークなどの新しいテクノロジーを通じて、世界中の経済、環境、社会にポジティブな影響を与えることを目標にしています。
パトロー:利益が望めないと思われるために他のプロバイダがサービスを提供していない地域がありますが、そのような場所こそネット接続が強く必要とされており、大きな需要があります。医療対応、緊急避難、災害復旧はすべてネット接続に依存しており、医療機関とのやり取りやリアルタイムのコミュニケーションが死活問題である多くの農村地域では、その傾向が特に顕著です。2019 年のKacific-1 の打ち上げと、それに続いて複数の衛星を打ち上げたことにより、低速で不安定な通信環境しかなかった地域の人々も、今ではネット接続で医療や災害に関する連絡ができるようになり、オンライン教育も利用可能になりました。
オン:世界的感染拡大により、コロナウイルスのまん延防止が重要な課題となる中、安全な非接触型デジタルサービスの必要性が高まりました。当社 の自動バンキングソリューションは、モバイル銀行口座開設サービスなどの日常のバンキングサービスをデジタル化し、地域で開発した非接触型の顔認証および虹彩認識アルゴリズムを使用してユーザーを特定します。たとえば、カンボジアのアクレダ銀行やマレーシアのアライアンス銀行と提携して当社の「セルフ窓口端末」を展開しました。この端末では顧客が当社の顔認識技術を使って本人確認を行うことで 10 分で銀行口座が開設できます。待ち時間が短くなることでウイルス感染の可能性が軽減されました。
テオ:東南アジアでは、中小企業は経済成長、イノベーション、雇用の重要な源泉です。こうした状況にもかかわらず、中小企業は、さまざまな理由からリスクが高いと認識されることが多く、たいていの企業が金融機関のサービスを依然として十分に受けられていません。理由の一部には、クレジットの信用実績がゼロだったり低評価だったりする、信用評価のための資産や財務書類が不足している、などがあります。Funding Societiesでは中小企業向けの短期融資を専門とし、2022 年までに、地域の約 10 万の中小企業に対する 510 万件以上の貸付けを通じて 26 億米ドル以上の資金を融資してきました。
マリオット:当社は、業務のデジタル化、サプライチェーンの強化、ビジネス全体にわたる持続可能性の確立を行うことで、組織が抱える最大の課題に対処できるよう支援します。これにより、顧客企業がサービスを提供するコミュニティにもメリットをもたらします。最近の例として、シンガポールで開始された「4W Wizard」プロジェクトがあります。このプロジェクトでは、国際連合人道問題調整事務所(OCHA)が SAP の Business Technology Platform を使用して、アジア太平洋地域全体の災害から得た膨大な量のデータを効率的に分類して解釈しました。結果としてすべての関係者の災害対応ミッションの調整に必要な洞察を得ることができ、最も切迫した人々のために人命救助活動を実行する時間を増やせました。
オン:シンガポールは、新しいアイデアやテクノロジーソリューションの試験場として優れており、当社も利用者層を拡大する前に実験や試行ができるというメリットが得られました。また、東南アジアのハブとして、ここには地域で最も先進的で多様なテクノロジー企業が集まっており、同じ志を持つ企業がネットワークを構築し、より良い明日に向けて協力し合える環境が整っています。
マリオット:シンガポールに本社を置くということは、この強力なエコシステムとパートナーシップに参加しているということです。ここでは未来対応型というだけでなく、持続可能でインクルーシブでもあるソリューションを創造、革新し、地域のすべてのお客様からさらに広範囲のお客様に対して提供していこうという意欲がわきます。
テオ:シンガポールは私たちの夢の出発点でした。2015 年には、ここは物理的な拠点を持たずにビジネスを開始できる東南アジアで唯一の国でした。私たちは会社を法人化し、チームを雇用して、シンガポールで事業を立ち上げるというすべてのことをハーバードビジネススクール在学中に行えたのです。また、この都市国家は規制や商業環境も先進的なので、新しいフィンテックビジネスモデルの実験には規制当局にも合理的な範囲内で関与してもらうことができました。私たちのシンガポールの規制当局とのやり取りの記録が、地域でビジネスを拡大する上での信頼性確保につながり、幸いにも、東南アジア進出に弾みがつきました。
パトロー:シンガポールはビジネスへのアクセシビリティが高く事業を行いやすいので、製品の市場展開方法にインスピレーションがわいてきます。当社の製品は小型で設置が容易なため、孤立した市場の利用者にもアクセスできます。
マリオット:シンガポールは世界で最も革新的な都市の 1 つとして知られています。この地が惹きつけ、成長させているさまざまな組織体の途方もないエコシステムが、今日の最重要課題を解決するイノベーションを生み出しています。シンガポールは、現在について考えているだけではありません。信じられないほど強力なロードマップを描いて将来に備えています。この文化とアプローチは、SAP での取り組みとも合致しています。
「未来の航空宇宙都市」と呼ばれるシンガポールは、130社を超える航空宇宙業界の企業を擁し、アジア最大級で最も多様なエコシステムを誇ります。一流企業や宇宙産業スタートアップ企業をはじめとして成長を続ける企業が拠点を置いています。
シンガポールは、アジア市場への玄関口であり、世界トップクラスの消費者向け企業の多くが、環太平洋の拠点としてシンガポールを活用しています。
シンガポールは、東西のクリエイティブカルチャーが交差する場所であり、拡大を続けるこの地域の消費者基盤へ向けて開かれた扉でもあります。世界的ブランドが、地域統括会社を構えており、トップクラスのクリエイティブな企業がシンガポールを拠点としています。
今日、主要なガジェットにはシンガポール製の部品が使用されています。エレクトロニクス産業の一流企業は、シンガポールで未来を設計しています。
精製、オレフィン製造、化学製品製造、ビジネスと革新力が強力に融合するシンガポールは、世界最先端のエネルギーと化学産業のハブに数えられています。100社を超えるグローバル化学企業が主要な事業を当地に構えています。
アジアのデジタルの中心都市として、シンガポールは情報通信技術 (ICT) 企業が選ぶ拠点となっています。世界クラスのインフラ、人材、活気のあるパートナーのエコシステムを提供しています。一流企業と連携して、最先端の技術とソリューションを開発し、シンガポールのビジョンであるスマートネーションと地域および世界の市場を支えています。
アジアの流通のハブとして、当地域内外への世界クラスのコネクティビティを提供します。安全で効率的なロジスティクスと、サプライチェーン管理ハブとしての妥当性を以て、シンガポールは地域の境界を超えた取引と消費に貢献しています。
シンガポールは、医療技術企業がこの地域で成長するための戦略的な拠点です。今日、多くの多国籍医療技術企業がシンガポールを拠点として、地域本社機能や製造、研究開発を行なっています。
資源豊かなアジアの中心に位置するシンガポールは、農産物、金属、鉱物のグローバルハブです。我が国のビジネス環境は、強力な金融、サプライチェーン管理、技術力を以て、世界をリードする企業を引き付けています。
シンガポールは、アジアでも主要な石油 ・ ガス (O&G) 装置とサービスのハブであり、3,000社を超える海洋・オフショアエンジニアリング (M&OE) の会社があります。世界クラスの機能と優れたコネクティビティは、アジアの強力な成長の可能性に着目する多くの企業をシンガポールに誘引しています。
シンガポールが有する優れた人材、強い生産能力、研究開発のエコシステムは、製薬やバイオテクノロジー企業を誘引しています。企業はシンガポールから世界中の人々に薬を提供し、アジア市場の成長を担っています。
シンガポールの洗練された精密工学(PE)の能力と先進の製造技術で主要分野である高度な製造な地域ハブとしての強みを反映しています。
シンガポールは、プロフェッショナル・サービス企業に最適なハブであり、国際的な労働力と信頼できる規制と枠組みを提供します。
アジアは世界的な都市化のメガトレンドの中心であり、人口集中や公害、環境悪化などの都市問題の軽減を目指して、各国政府はスマートで持続可能なソリューションの開発を推進しています。大企業のいくつかはシンガポールを拠点として、アジアのために持続可能なソリューションを商業化すべく、革新、試行、連携を進めています。