ラム・マハデヴァン氏
CEO
Jiva
人口と食料需要の急増に、気候変動やサプライチェーンの混乱が加わることは、世界的な食料危機が迫っていることを示唆しています。 今後数十年に亘って、すべての人に十分な食糧を供給するために、シンガポールで活躍している企業がどのようにイノベーションを行っているかをご覧ください。
CEO
Jiva
共同創業者兼製品責任者
AquaEasy
グループ CEO
Cremer
CTO
Bühler
気候変動、サプライチェーンの混乱、食料価格の上昇が、世界人口の急増と食料の需要増と相まって、世界的な食料危機が迫っていることを示唆しています。これは、次のような疑問を投げかけます。どのようにすれば、今後数十年にわたり、世界中のすべての人に十分な食料を確保することができるでしょうか。
シンガポールでは、飢餓が深刻化する地球とその未来の世代に食料を供給するための新しいイノベーションを提供すべく、企業がこの極めて深刻な課題に取り組んでいます。
収穫状況を予測して不作のリスクを低減するアグリテックプラットフォームのJivaは、数百万人の農家を支援しています。AquaEasy(Bosch傘下のベンチャー企業)は、水の状態を監視するシステムとソフトウェアを使用して、収穫量を最大 30 % 増やしてエビ養殖業者を支援しています。一方で、CremerとBühlerは、肉類への依存を減らすために、栄養価が高く持続可能な植物性タンパク質を開発しています。
Jivaの CEO、ラム・マハデヴァン(Ramanarayanan (Ram) Mahadevan)氏、AquaEasyの共同創業者兼製品責任者、ソメッシュ・クマール(Somesh Kumar)氏、Cremerのグループ CEO、ウルリヒ・ウェゲナー(Ullrich Wegner)博士、Bühlerの CTO、イアン・ロバーツ(Ian Roberts)博士が、食糧問題に総合的に取り組む方法について意見を交わしました。
(写真提供:Jiva)
(以下、敬称略)
マハデヴァン:ジーバが支援しようとしている 5 億人の小規模農家は、世界の食料の 70 % もの生産に携わっています。しかし、彼らは自分自身を維持するために十分な収入を得ることに苦労しています。多くの人が農業をやめて他の仕事に移り、危機に瀕しています。私たちの夢は、この連鎖を絶ち切って、小規模農家に再び喜びをもたらすことです。持続可能な暮らしを実現するデジタルエコシステムで、次世代の農家や地方の起業家にインスピレーションを与えることができれば、貧困を緩和し、食料確保を進める役割を果たすことができます。
クマール:海は当社の主要なシーフード源でしたが、何十年もの乱獲と気候変動の影響で、これまでのようなビジネスはもはや不可能になっています。当社は、水産養殖業界を変革し、世界に食料を供給し、地球を保護したいと考えています。AIoT (AI(Artificial Intelligence:人工知能)とIoT(Internet of Things:モノのインターネット)を組み合わせた技術)ソリューションを利用して、エビ養殖業の生産性、収益性、持続可能性を高めています。
ウェゲナー:おいしく、手頃な価格で、気候に優しい植物由来の食品を生産することは、増加する人口への食料供給に不可欠です。栄養価が高く持続可能な代替食品を提供することが、世界的な食料危機を緩和し、自然環境を保護することにつながると考えています。
ロバーツ:私たちは、世界に主食となる食料を提供するだけでなく、それをプラネタリーバウンダリーの範囲内で行うことに精力的に取り組んでいます。2050 年までに 100 億人に食料を供給するという重要な役割を果たしながら、気候変動の緩和、自然と生物多様性の回復、そして公平な富の分配の実現に努めています。
(写真提供:Cremer)
マハデヴァン:パーソナライズされた作物栽培学アドバイザリであるJivaの Agronomy Nudge Brain は、場所、種子の種類、植え付け時期、現在の気象データに基づいて、農家が従うべき理解しやすいアクションをスマートフォンに直接提供します。当社は、殺虫剤を散布するタイミングを正確に判断し、その場所に適切な肥料のバランスを追加して収穫日まで予測することで、最終的には、農業従事者が、より多くの情報に基づき、より健全な収穫のための意思決定を下すことができるようにします。
クマール:エビの養殖はリスクが高く、生産量の最大 22 パーセントが病気のために失われます。良好な水質を維持することは非常に重要ですが、物理的、化学的、生物学的な要因が複雑に絡み合って、それを非常に困難にしています。当社では、最先端のセンサーと自社の AIoT ソフトウェアを組み合わせて、水の重要なパラメータを継続的に監視し、エビの食欲に合わせて給餌を調整しています。私たちは飼料転換率を 30 % 向上させ、エビの成長を早めることができました。エアレーションシステムの故障による酸素濃度の急激な低下、硝化不良によるアンモニア濃度の上昇、エビの異常行動などを私たちのシステムが養殖業者に警告し、漁獲量減少のリスクを抑制しました。
ウェゲナー:私たちは、飼料と食品生産の専門知識を活用して、地球規模の食のエコシステムを支える、気候に優しい植物ベースの食品のイノベーションに向けた新しい取り組みに着手しました。シンガポールのTemasekが開設した Nurasaとの最近の合弁事業である Cremer Sustainable Foods の施設では、高水分押し出し技術を必要とするアジアのパートナーに、受託製造施設を提供し、肉に似た食感のタンパク質を製造する予定です。つまり、当社はアジア向けの革新的な代替タンパク質製品をシンガポールで製造しています。
(写真提供:Bühler)
ロバーツ:世界をリードする企業や組織と提携するシンガポールの一貫した取り組みは、食品システムの変革のための灯台となり、世界での実質ゼロ達成を可能にしています。
マハデヴァン:不可能を可能にしているシンガポールは忍耐力の代名詞です。この国は小さな漁村として始まり、今では経済大国となっています。それは、新しいことに果敢に挑戦して、創造性を発揮し、既成概念に挑戦することにより達成されました。このことは私たちに、乗り越えられないものは何もないことを思い出させてくれます。
ウェゲナー:シンガポールは創造性と成長のロールモデルであり、この国の向上意欲は止めることができません。代替食品ソリューションの分野だけでなく、イノベーションとビジネスの多くの領域でも、先駆者であると思います。
(写真提供:Aquaeasy)