エネルギー転換は、低炭素経済に向けた世界的な進展にシンガポールが貢献する好機です。未来の経済を左右するのは、太陽光発電や風力発電、バイオ燃料、水素、炭素回収・貯留のためのインフラなど、未来のエネルギーシステムです。また、未来の経済には、消費者や企業が低炭素技術や燃料を採用できるよう保証する、政府による規制・政策による保証が求められます。
そのためには、より緊密かつ効果的に官民協働することで、エネルギー移行を共に乗り越えていくことができるでしょう。
その一例が、ここシンガポールにあります。それは、プラウ・ブコム島にある当社によるアジア唯一のエネルギー・化学拠点です。シェルはシンガポール初の石油貯蔵施設を設立した後、1961年にはプラウ・ブコム島に同国初の製油所を設立しました。そして現在、同島の施設をエネルギー・化学拠点へと転換を進めており、バイオ燃料のような低炭素エネルギー製品の生産、廃プラスチックの原料化といった循環型への対応、再生可能エネルギーの供給などに取り組んでいます。
地域における脱炭素化の「コーディネーター」
フランスを拠点とする電気・天然ガス・エネルギー事業大手エンジー社のCEO キャサリン・マクレガー(Catherine MacGregor)氏。同社は20年前にシンガポールへ進出し、地域本部を置いている。
昨今のマクロ経済学的および地政学的な文脈において、サプライチェーンの推進企業が持続可能性とレジリエンスへの取り組みを急速に発展させています。こうした状況は、東南アジアの脱炭素化に向けた中心的コーディネーターとして、シンガポールの役割を深化させる絶好の機会となります。
例えば、地域冷房や屋上および水上太陽光発電設備といった低炭素ソリューションにおいて、若い世代と熟練エンジニアをともに育成支援することは、シンガポールの重要な役割であると私たちは考えています。こうしたスキルは輸出に非常に適しているため、地域の脱炭素化目標の達成を後押しするとともに、エネルギー供給とソブリンリスク(信用リスク)を緩和してくれるでしょう。
また、シンガポールは企業が現地の要件や投資上の制限といった、地域特性の理解を深めるためのサポートを行うこともできるでしょう。こうした複雑な問題は、脱炭素化に向けた統一規制の枠組を地域レベルで策定できるように支援することで軽減することができるでしょう。すなわち、財政的なてこ入れ(炭素税、クロスボーダーの炭素取引、会計)や民間の低炭素分野の投資促進を通じて実現できるでしょう。
シンガポールは、新規事業やイノベーションのスケールアップに適した魅力的な場所です。当社はこれまで、国内と海外、両方の人材を(適切な移民計画に従い)うまく組み合わせ、優秀な人材にアクセスしやすい環境を活用してきました。
また、事業を保護・保証する強固で明確な制度、グローバル展開の容易さ、豊富なマーケティングテストの機会も得てきました。こうした要素は、将来を見越した事業への取り組みを促進してくれました。例えば、Engie Labとのイノベーションへの投資、Engie Factoryを通じた新規ベンチャー支援、人材パイプライン開発に向けた現地大学との提携などです。 Engie LabとEngie Factoryは、当社の能力向上やイノベーションを迅速にテストする上で役立っています(例えば、セマカウ島ではパイロットサイトを大規模に運用)。さらに、グリーン水素などの冷却・再生可能エネルギーソリューションを通じて、東南アジアのエネルギー移行を安価で利用可能にすることにも役立っています。