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<先進的事例>アジア太平洋・日本地域の持続可能性の推進を成功へと導く

<先進的事例>アジア太平洋・日本地域の持続可能性の推進を成功へと導く

「持続可能性」はもはや単なる流行語ではなく、企業が自社のビジネスを未来に適合させるために考慮すべき重要なファクターへと変化してきた。<a class="external-link" href="https://edgar.jrc.ec.europa.eu/report_2023" target="_blank">世界第5位の二酸化炭素排出国</a>であり、製造業大国である日本では、多くの企業が脱炭素化に取り組んでいるが、いまだに欧米諸国の後塵を拝している。そこで、シンガポールとの連携により、日本の持続可能性への取り組みを加速していく方法を探る。

<先進的事例>アジア太平洋・日本地域の持続可能性の推進を成功へと導く

グローバル・サステナビリティを率いる日本の未来 

企業が自らの事業の使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアチブ「RE100」へのコミットメント数や、科学的根拠に基づく目標「ネット・ゼロ」への誓約数で日本は世界2位につけている。 

また、シュナイダーエレクトリックが2023年に行った調査でも、日本企業の持続可能性へのコミットメントの高さは裏づけられている。調査の対象となった日本企業500社のうち、83%の意思決定者が持続可能性を優先課題と回答し、73%が持続可能性における目標を掲げている。この結果からも、日本企業は意思決定者を中心に、持続可能な未来の構築に真剣に取り組んでいることがわかる。 

こうしたポジティブな傾向はみられるものの、アジア太平洋地域(APAC)には大きな「グリーン・ギャップ」があるという調査結果も出ている。グリーン・ギャップとは、目標を設定している企業と、それを実行に移している企業の差から算出する。APACでは「目標を設定している」と答えた94%のうち実行できている企業は44%と、50%のグリーン・ギャップが生じている。このことから、実行可能な持続可能性ソリューションを求めている企業が多数存在することがわかる。APAC特有の持続可能性課題に対するソリューションと実行計画の策定は、マーケットリーダーになるうえで重要な要素になる。 
 

「ギャップ」を埋める、シンガポールからの学び 

日本とシンガポールのコラボレーションにおける強みや成功事例を活用することで、APAC全体における持続可能性の変革をリードすることが可能となる。シンガポールはグリーン・ギャップが2番目に小さく(38%)、有言実行能力の高さを示している。

「シンガポール・グリーンプラン2030」のような政府の強力な政策に支えられ、シンガポール企業の94%が持続可能性に関する目標を設定し、56%がその戦略を積極的に実施している。これは、先進的な政策と企業の意欲が融合した強力なエコシステムがイノベーションを促進していることを示している。またシンガポールが、持続可能なビジネスソリューションの拠点であることの表れでもある。
 

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基本へ立ち返る:勝つためのゲームプランと戦略立案 

持続可能性への取り組みは、外部の専門家と連携することでグローバルな評価基準から成長の過程を客観視することが可能となる。業界標準や市場動向に目を向けることで、より具体性と将来性をもった戦略を構築することができる。 

シュナイダーエレクトリックのAPMEA(アジア太平洋・インド・中東・アフリカ)サステナビリティ事業部責任者であるファルク・シャドは、次のようにコメントしている。 

「Fortune500に名を連ねる企業の半数以上と協働してきた経験から言えば、持続可能性を達成するためには、強固な戦略から始まり、進捗管理を行うためのデジタルツールの導入が必要です。そして最終的には、事業とバリューチェーン全体で脱炭素化計画を実行するための適切なテクノロジーとリソースの配備という、統合的なアプローチが欠かせないことがわかります。戦略策定は正しい出発点である一方で、多くの企業は短略的に実行しようとするがために、潜在的な相乗効果とコスト効率化を見逃しているケースが少なくありません」 
 

真実の源泉はひとつ:データ主導の進歩を 

測定なしには分析や管理をすることはできない。デジタル化は、企業が持続可能性関連データを統合し、分析するための重要な手段である。 

例えば、世界的なスポーツ用品メーカーであるアシックスは、持続可能性の推進におけるデジタル技術の可能性を実証している。シュナイダーエレクトリックのEcoStruxure™ Resource Advisorソフトウェアプラットフォームを導入することで世界中の業務データとサプライチェーンデータの一元管理を可能にし、非効率性の特定や、コスト、カーボンフットプリントの削減に成功した。 '

2023年の「世界デジタル競争力報告書(World digital Competitiveness Report)」でシンガポールは、アジアで最もデジタル競争力のある経済国として位置づけられており、APACをリードしている。シンガポールのデジタル経済は2022年のGDPに17.3%寄与しており、金融、卸売、製造業などの非技術部門がその大部分を牽引している。このため、シンガポールは持続可能性の指標を測定・追跡するための革新的なデジタル・ソリューションを調達するのに理想的な環境となっている。 
 

再生可能エネルギーの長期契約を活用し、エネルギー転換の将来性を証明する 

電力購入契約(PPA)は、長期に固定された電力価格による安定性と、外部の再生可能エネルギー源にアクセスする拡張性により、企業に持続可能性への新たなソリューションを提供する。また、グリッドへ新しい再生可能エネルギーを供給する追加性により、より環境に優しいソリューションとなる。 

供給面での課題がある一方で、開発者、シンクタンク、専門家等からなるシンガポールの再生可能エネルギーのエコシステムは、操業時の排出量だけでなく、スコープ3(原材料仕入れや販売後に排出される温室効果ガス)排出量にも対応しており、ベストプラクティスの最前線にあると言える。 

例えば、インテル、GoogleなどIT業界のリーダーや、GSK、MSDといった製薬大手は、シュナイダーエレクトリックのようなエコシステム・パートナーと協力し、PPAを用いたサプライチェーンの脱炭素化の取り組みを行っている。これは、再生可能エネルギー調達に関するシンガポールの知見や専門性を活用することが、日本企業の脱炭素化にも有効であることを示している。 
 

従来のハードウェアにソフトウェアと高度な分析を組み合わせることで実現する脱炭素 

温室効果ガスの排出量など環境への影響を低減しながら、エネルギーと運用コストを削減するエネルギー効率化の取り組みを行うことで、ビジネス・パフォーマンスの向上を図ることができる。

昨年、多国籍製薬会社の武田薬品工業は、初の「ポジティブエネルギービル」をシンガポールに開所した。このビルは、建築建設庁(BCA)のグリーンマーク・ゼロ・エネルギー認証スキームに準拠して建設された。消費電力量よりも生産電力量のほうが多いことを示すグリーンマーク・プラチナ・ポジティブ・エネルギー認証を取得した。 

このビルには、1,600平方メートル分の太陽光発電パネルが設置されているほか、シュナイダーエレクトリックのビル管理システム(BMS)であるEcoStruxure Building Advisorを導入しており、リアルタイムの情報とデータに基づいてシステムを追跡、分析、運用し、持続可能性目標を達成するための機会の領域を特定することができる。 
 

最後に

持続可能性を推進する際には、複数の国、言語、文化にまたがって活動する複雑さを考慮することが極めて重要だ。シュナイダーエレクトリックは、シンガポールおよび世界各地にサステナビリティの専門家を配置するために多大な投資を行ってきた。 

シュナイダーエレクトリックのファルク・シャドは次のように語っている。 

「武田薬品の事例をはじめ、シンガポールにあるシュナイダーエレクトリックのSustainability Competency Centre(SCC)は近年、東南アジア・アジア太平洋諸国のほとんどで、100を超えるプロジェクトを通じて企業のサステナビリティへの取り組みを支援してきました。シンガポールに拠点を置いている我々のSCCは、地域と領域に関する専門知識を提供し、日本に拠点を置くパートナーやお客様がサステナビリティの目標を達成できるよう支援します」 
 

寄稿者紹介
 

​​田中二郎​

​​田中二郎​​​
​​カントリーマネージャー​
​​サステナビリティ事業部​
​​日本​

​​アレクサンドリュー・ポパ​

​​​​アレクサンドリュー・ポパ​​​​
​​シニアマネージャー​
サステナビリティ事業部​
​​シンガポール​

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