グローバルな3者提携でシンガポールでのプロジェクトを推進
摂氏マイナス33度で液体化するグリーンアンモニア、そしてグリーン水素は、電解装置を使用して製造される。電解装置は電気を用いて水分子を水素と酸素に分解する仕組みで、グリーンアンモニアはこの水素を利用して作られる。
使用時にCO₂を排出しないこれらのグリーンガスの一部は、シンガポールの政府系投資会社であるGIC、マレーシアの石油会社Petronasの再生可能エネルギー部門であるGentari、インドに拠点を置きグリーンアンモニアやグリーン水素を製造するAM Greenの3者の提携を通じて供給される予定だ。
この提携を通じAM Greenは、2026年までに、インドからシンガポール、さらに日本、韓国などの市場にクリーンエネルギーを輸出し、2030年までに年間約100万トンのグリーン水素を製造することを目指している。
AM Greenは2006年にインドで設立された再生可能エネルギー企業であるGreenko Energy Holdingsの完全子会社であり、Greenkoは化石燃料を持続可能かつ安価なエネルギーに置き換えることを目的としている。
また、Petronasはこの提携に16億米ドル(約2,496億円)を投資したと報じられている。一方、Greenkoの株主の一つであるGICは、The Straits Timesの取材に対し、投資に関するコメントは控えた。
コストとインフラの整備がクリーンエネルギー普及への課題
Greenkoの社長兼共同マネージング・ディレクターであるマヘシュ・コリ氏は、同社はまずクリーンエネルギーを石炭やその他の化石燃料よりも安価にすることを目指し、その後、シンガポール、ヨーロッパ、経済協力開発機構(OECD)加盟国などの市場に輸送する計画であると述べた。
さらに、グリーンアンモニアを受け入れるために必要なインフラの準備がシンガポールで整うには、1~2年かかる可能性があるとも話した(2023年10月時点)。
この提携は2023年10月30日に発表されたが、それに先立ち、2022年10月にGreenkoとシンガポールのインフラ企業Keppel Infrastructureとの間で別の提携が行われた。
その2者の提携は、少なくとも年間25万トンのグリーンアンモニアを製造する施設の開発を検討し、さらに、その生産施設を稼働させるための太陽光および風力エネルギーのプロジェクトのポートフォリオを評価することが目的とされている。
市場調査などのデータを提供するドイツのStatistaは、2021年のシンガポールのグリーンアンモニア市場規模は60トンだったが、2030年までに約1万8,000トンへと大幅に増加すると予測している。
そのようにグリーンアンモニアが未来の燃料として注目されている一方で、それを大規模かつ定期的に使用するには高いコストが伴う。
例えば、グローバル商品市場のスペシャリストである調査会社のArgusは、グリーンアンモニアは化石燃料ベースの海運燃料の約4倍のコストがかかるとしている。
また、金融評価や格付けを行うS&P Globalによると、2023年9月のグリーンアンモニアの月間 平均価格は最高で1トンあたり804.65米ドル(約12万5,500円)だった。