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グローバル展開にシンガポール人材を 活かす三井化学 日本の企業文化と地元の知識を 兼ね備えたハイブリッド人材で 海外展開をリード

グローバル展開にシンガポール人材を 活かす三井化学 日本の企業文化と地元の知識を 兼ね備えたハイブリッド人材で 海外展開をリード

三井化学は、グローバルに展開する世界最大の総合化学メーカーだ。中でもシンガポールは、アジア太平洋地域の統括本部として、アジア市場を見据えたサプライチェーンの一大拠点としての機能を担っている。このシンガポールの役割は、ASEAN諸国の消費市場の勃興により、ますます重要性を増してくる。


Mitsui Chemicals Asia Pacific, Ltd. (MCAP) 調達部門・アシスタントマネージャー ブレンダン氏

しかし、その一方で、国によって様々な多様性を持つASEAN諸国の市場を攻略するためには、適材適所な人材が必要だ。国ごとの特性、すなわちその地域の歴史や文化、経済、ライフスタイルなどを理解している人材を活用することが企業の拡大戦略を推進するうえでは欠かすことができない。三井化学は、こうしたグローバル市場に対応するため、様々な取り組みを行っている。それが独自の奨学制度による若手人材の育成と、日本の企業文化と地元の知識に精通するグローバル人材の育成である。今回は三井化学で活躍する3名とともにシンガポール人材の特長をご紹介しよう。

「プラスチックの市場は、ますます多様化しています。製品開発から原料調達まで経験することで、更なるグローバルニーズにこたえていきたい。」

ブレンダンは、三井化学グループが2012年に設けた奨学金制度の第1号に選ばれた特待生だ。シンガポール国立大学を卒業後、東京工業大学で化学工学の修士号を取得。三井化学グループに入社後は、プロセスエンジニアからポリマー販売の技術サポートまで幅広い分野を経験してきた。現在は原料調達部門のアシスタントマネージャーを務め、新たな領域で活躍している。ブレンダンは三井化学グループの中でも、日本とシンガポール両方での経験を持つ数少ない人材だ。大阪工場に勤務していた経験から、日本の企業文化を学び、日本との良好なネットワークを構築している。「大阪工場での経験は、三井化学グループが持つ日本の企業文化を知るうえで非常にいい経験でした。指さし確認などの安全検証は日本企業独自のもので、シンガポールにも導入可能だと思っています。実際、私は今でも実践しているんです。」また、大阪工場での勤務で得たもう一つの財産が人間関係だ。「日本で構築したネットワーク、人間関係が最大の財産です。日本の三井化学グループには非常に経験豊かな先輩がおり、そういった先輩たちとコミュニケーションすることで、課題解決に助かるだけではなく、その経験談から色々なことを教えられます。」と語る。「三井化学グループは、原材料のサプライヤーだけではなく、お客様のソリューションプロバイダーに変身しようとしており、私もその中で更に成長したいと考えています。」と今後の抱負について語っている。

Mitsui Elastomers Singapore Pte Ltd(MELS) プロセスサブリードエンジニア カイトゥン氏

「エンジニアとしてのスキルを磨き、生産現場から事業開発まで様々なチャンスを活かしビジネスに貢献したい。」

同じく三井化学グループの奨学制度によって入社したカイトゥンは、ブレンダンの2年後輩だ。シンガポール国立大学を卒業後、東京工業大学で化学工学の修士号を取得。当時の若手候補として、三井化学グループのインターンシップに参加し、同社について様々なことを学びました。三井化学グループに入社後は、上級化学技術者としての道を歩み、現在は、市原工場に勤務し、日本の企業文化を学び、感心する日々を過ごしている。「日本企業で働く人たちの完璧にこなそうとする姿勢や、ベストを尽くそうという姿は大変勉強になりました。」と語る。また、エンジニアとしてのキャリアを進んでいるカイトゥンにとって三井化学グループで働く最大の魅力は、積極的に有能な人材を育成する機会を与えていることだ。「三井化学グループには様々な課題に取り組む機会があり、自分が仕事を通して成長しているという実感を与えてくれます。」とその魅力を語る。「今後も会社の中にある色々なチャンスを積極的にとらえていきたい、また、エンジニアとしてだけではなく、将来は経営計画や開発など、自分の知らない分野にも貢献したいと思っています。」三井化学グループの成長と共に、カイトゥン自身もキャリアを積み重ねている。

Mitsui Phenol Singapore(MPS) プラントゼネラルマネージャー シーファイ氏

「シンガポール人初のゼネラルマネージャーとして、140名の多様な国のスタッフを率いることは大きな挑戦です。」

シンガポール初の現地工場長であるシーファイは、現在、ジュロン島のMitsui Phenol Singapore(MPS)の運営を監督している。シーファイは、三井化学グループに入社してから19年、様々な三井化学グループの開発プロジェクトに取り組んできた。「私は組織と一緒に育ってきました。その過程において日本の様々な文化について学びました。その一例が、安全と勤勉の企業文化です。」と自らの経験を語る。この長年における豊富な経験と共に、ASEANをはじめとする地元の文化にも精通していることから、工場のゼネラルマネージャーに選ばれた。「私は日本の本社と前任者が設定した高い基準を満たさなければなりません。また同時に、私は自分のASEANに関する知見が、三井化学グループのグローバル展開に役立つと考えています。」と語っている。まさにシンガポールと日本、両方に精通するシーファイならではの役割が求められている。「140名の様々な国のスタッフを率い、成長に貢献できることは大きな挑戦です。」と三井化学グループのグローバル展開に意気込みを語っている。

アジア第1位の教育レベルと日本の企業文化を身につけた人材

シンガポールの教育レベルはアジアで最も高い水準にある。例えば英クアクアレリ・シモンズ(QS)の2018年世界大学ランキングによると、シンガポール国立大学は、世界の大学ランキングで15位、南洋理工大学は11位にランクインしている。シンガポールの大学は様々な指標や測定値に基づいて計測され、一貫して世界のトップレベルにランクインしている。このグローバル化され多数の言語を話す従業員によって企業競争力を強化することができる。また、シンガポールの高度に教育された労働力と、日本の企業文化を学ぶ関心が、多様性を求められるグローバル市場において活躍できる人材を育てることにつながっている。三井化学グループの活動は、今回ご紹介したように、シンガポールがアジアにおける優れた人材獲得の拠点であることを証明してくれている。将来のASEAN市場をはじめとするグローバル展開において、現地と日本の企業文化に精通した人材が、企業の成功に大きな役割を発揮することだろう。

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