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Business for Good〜ビジネスで、より良い世界を〜 Vol.03 大きな夢を抱く小さな都市国家で活動するMedtronic

Business for Good〜ビジネスで、より良い世界を〜 Vol.03 大きな夢を抱く小さな都市国家で活動するMedtronic

シンガポールには、単なる経済活動ではなく、より良い明日への原動力となるビジネスがいくつも存在する。ここでは、そうした“人と地球に優しいビジネス”に取り組む企業をシリーズで紹介する。

Business for Good〜ビジネスで、より良い世界を〜 Vol.03 大きな夢を抱く小さな都市国家で活動するMedtronic

シンガポールが推進する「Business for Good」

温暖化やエネルギー問題など世界が数々の壁に直面するいま、シンガポールは人と地球に優しい世界を創造していくために、持続可能な発展を生み出すイノベーションを推進するなど、利益と目的とのバランスが取れたビジネスを支援することに力を注いでいる。そこでこのページでは、シンガポールと連携して、そうした「ビジネスでより良い世界を目指す取り組み」に励む企業をピックアップ。3回目の今回は、ヘルスケアテクノロジーのリーディングカンパニーであるMedtronicの取り組みを伝える。
 

Medtronic

アイルランドに本社、シンガポールにアジア太平洋地域本部を置く医療機器大手。1949年創業。1960年に世界初の体内植え込み型ペースメーカを商品化して以来、数々の先端医療技術を世に送り出し、慢性疾患に苦しむ患者の健康回復とQOLの向上に貢献してきた。現在では70以上の製造施設や多くの研究施設、教育施設を構え、150カ国以上で活動を行う。

デジタルヘルスの技術革新で医療アクセスの改善を 〜Medtronic Vice President for Global Commercial Operations & Customer Experience ダイアナ・タン(Diana Tang)氏〜

デジタルヘルスの技術革新で医療アクセスの改善を 〜Medtronic Vice President for Global Commercial Operations & Customer Experience ダイアナ・タン(Diana Tang)氏〜

私たちは70年以上にわたり人類の健康課題と向き合い、ヘルスケア業界を牽引してきた企業です。心臓ペースメーカや糖尿病治療のためのインスリンポンプ、手術支援ロボット、外科用手術機器、患者モニタリングシステムなど、人々の痛みをやわらげ、健康を回復し、生命を延ばす、多様な医療機器を提供してきました。


そんなMedtronicがいま特に力を入れているのが、急速に発展するデジタル技術を医療に活用するデジタルヘルス領域、つまりヘルスケアとテクノロジーを融合したソリューションの開発です。例えば、日本初のリードレスペースメーカもそのうちの一つです。従来のペースメーカのように皮下に植え込まず、カテーテルで心臓内に本体を送り込むことができるため、植え込みによる合併症のリスクがありません。さらに、電気信号を送るリードが本体と一体化されているため、リードの断線の心配もありません。


日本では2017年に保険適用になるなど、世界で多くの患者さんの不整脈治療に役立てられてきました。そんなMedtronicのペースメーカもさらに進化し、2022年に日本で発売された新型ペースメーカは、心室内から心房の動きを検出する独自のアルゴリズムを搭載。これにより、正常な心臓収縮により近いペーシング療法を提供できるようになりました。


 また、手術映像を分析し治療改善に活用するシステム「Touch Surgery Enterprise」も構築し、すでに数カ国で導入が始まっています。こうした技術により医療ビッグデータの活用が進めば、医療の質のばらつきの低減にも貢献できると考えています。  さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、医療従事者が患者さんに遠隔で医療サービスやバーチャルケアを提供するための遠隔機器管理技術の開発を加速させてきましたが、そんな2021年初め、会長兼CEOのジェフ・マーサ(Geoffrey Martha)がある大胆な発表をしました。


それは、ヘルスケアテクノロジー業界の世界のリーダーになるというもので、デジタルヘルスソリューションにより患者さんの医療へのアクセスを改善することが最大の目的です。「すべての人が住む場所に関係なく、最適な医療にアクセスできる」私たちが目指すのはそんな世界で、デジタルヘルスソリューションをはじめとする医療技術の革新により、近い将来必ず実現できると信じています。そして革新の第一歩は、私たちが拠点を置くシンガポールですでに始まっているのです。

ダイアナ・タン (Diana Tang)氏 Medtronic Global Commercial Operations and Customer Experience Vice President

ダイアナ・タン (Diana Tang)氏 Medtronic Global Commercial Operations and Customer Experience Vice President

パートナーとして持続的な成長を支えるシンガポール

私たちはシンガポールに、2021年10月、医療技術やデジタルヘルス分野における能力開発、パートナーシップ、スタートアップのネットワーキングに重点を置き、オープンイノベーションを促進する仕組み「Medtronic Open Innovation Platform(Medtronic OIP)」を立ち上げました。

“第一歩”とはまさにこのことで、Medtronic OIPはアジア太平洋地域特有のヘルスケアニーズに焦点を当てた業界初のプラットフォームです。同地域のヘルスケア関連企業が集積し、戦略的なハブとして勢いを増すシンガポールを中心に、ステークホルダー間の連携体制を構築することで、技術革新を加速させていこうと考えています。

そしてもう一つ、2022年11月には「Medtronic Customer eXperience Center (MCXC) 」を開設。2000平方メートル以上の広さを誇るこの施設では、世界中の医療従事者が、バーチャルリアリティ、ロボットテクノロジーなどを用いた先進的なヘルスケアテクノロジーや手術手技に関するトレーニングをワンストップで受けられます。MCXCは、医療水準を改善するための先進的なテクノロジーの活用を通じて、世界のヘルスケアコミュニティをつなげる技術特化型のエコシステムの拠点として機能します。
それだけでなく、私たちは以前からシンガポールにアジア太平洋地域のヘッドクォーターや製造施設などを設立してきましたが、そのようにシンガポールをパートナーとして選ぶのにはいくつか理由があります。

まず、シンガポールには強力なヘルスケアエコシステムや、政府が支援する数多くのオープンイノベーションプラットフォームがあります。優秀な企業やスタートアップ、イノベーターが学び成長し、繁栄するためのしっかりとした基盤が築かれているシンガポールは、私たちにとっても、外部のパートナーと協業しながらイノベーションを起こしていくのに最適な場所だと考えています。

また、国民全体がデジタルに精通し、イノベーションを受け入れるインフラが整っていることも後押しとなっています。そして何より、シンガポール政府がヘルスケア分野のイノベーションの育成と成長に向け、揺るぎない信念を持って取り組んでいることです。私たちもMCXCを含むあらゆる活動で、シンガポール経済開発庁(EDB)をはじめとした政府から惜しみない協力を受けています。
そうした理由から、アジア太平洋地域のヘッドクォーターやMedtronic OIP、MCXCをシンガポールに設立することは必然的でした。そしてこれからも、シンガポールとのパートナーシップが末長く続くことを望んでいます。

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