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世界1位のデジタル競争力を誇るシンガポール 「IMD世界デジタル競争力ランキング」から見る競争力の源

世界1位のデジタル競争力を誇るシンガポール 「IMD世界デジタル競争力ランキング」から見る競争力の源

近年の急速なデジタルテクノロジーの進化は、国家の競争力にも大きな影響を与えつつある。AIやIoT、3Dプリント、ロボディクス、デジタル通貨など、こうしたデジタルテクノロジーは企業の競争力を高めると同時に、国家も経済を発展させるカギとして投資を行っている。


世界1位を誇るシンガポールのデジタル競争力

こうした背景から、IMD世界競争力センターは、毎年発表する世界競争力ランキングとは別に、“デジタル競争力”というテーマで「IMD世界デジタル競争力ランキング」と題した指標を発表している。世界1位を誇るシンガポールのデジタル競争力をご紹介しよう。

デジタル競争力の構成要素

「IMD世界デジタル競争力ランキング」とは

「IMD世界デジタル競争力ランキング」は、全世界63カ国のデジタル競争力を、3つの分野から分析し評価したものである。第一が“知識”(Knowledge)で、新技術の発見、理解、構築に必要なノウハウである。具体的には人材や、教育とトレーニング、科学的な集中分野の3つの指標から構成される。第二の分野が“テクノロジー”(Technology)だ。テクノロジーの分野では、デジタル技術の開発を可能にする環境全体を評価したもので、具体的には政府の規制への枠組みや、資本力、テクノロジーの枠組みという3指標で構成される。そして第三の分野が“未来への準備”(Future Readiness)だ。これは、将来デジタルに移行するための国の準備のレベルを評価したもので、適応に対する柔軟さや、ビジネスの敏捷性、ITインテグレーションなどが評価される。累計で9分野から構成されるが、この9つの分野は更に50もの指標から構成され評価される。それでは次に、シンガポールの各項目のポイントについてご紹介しよう。

 

"知識"と"テクノロジー"で1位、人材と環境づくりで高い評価

デジタル化を進める“知識”と“テクノロジー”の2分野が1位

シンガポールはランキングを構成する3つの分野のうち、“知識”で第1位、“テクノロジー”で第1位、“未来への準備”で第6位の順位を誇っている。この順位は、ハードデータ、いわゆる国や地域が持つ統計データと、国際的な専門家のパネルや、エグゼクティブへのオピニオン調査をベースにした調査データをもとに決定されたものだ。各分野の指標をより詳しく見てみると、“知識”を構成する3指標のうち、“人材”(Talent)が3年連続で1位を記録し、シンガポールの最大の強みである高いデジタル人材の存在がうかがえる。デジタル化を進めるための核になる存在が“人材”(Talent)であり、新たなテクノロジーを吸収し、利用するためにはこの“人材”(Talent)の存在が最も重要な役割を果たす。また、“テクノロジー^の分野では、”政府の規制の枠組み“と、”テクノロジーの枠組み“がいずれも1位にランクインしている。デジタルテクノロジーは新たな技術だが、新たな開発から生み出された製品や技術を、市場や社会の中に浸透させるためには政府の役割が重要だ。”政府の規制の枠組み“と”テクノロジーの枠組み“はいずれも、革新生み出し浸透させるための役割を果たしていると言えるだろう。ちなみに、”未来への準備“の分野においては、IT先進国デンマークが1位にランクインしており、インターネット小売業の浸透や、スマートフォンの高い普及率など、ITインフラに対する高い適応力が評価されている。

 

競争力の源となる“人”と“環境”でイノベーションを起こす

シンガポールは2013年から今回の2017年に至る過去5年間の評価においても世界1位を保ち続けている。特に“知識”は24年連続、“テクノロジー”は5年連続1位を記録している。このように見てみると、シンガポールの競争力の源はまさに知識の核となる“人”と、テクノロジーを浸透させる“環境”にあるということがうかがえる。変化を生み出し、変化を浸透させることが経済の持続的な成長には欠かすことが出来ないということを、シンガポールの競争力は示している。

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