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アジアにおける次世代のフード・イノベーションを切り拓く

アジアにおける次世代のフード・イノベーションを切り拓く

2020年にシンガポールに本社と研究開発センターを設立し、シードラウンドで1,320万USドルの資金を調達、植物性代替鶏肉のブランドTiNDLEを国内の11のレストランで発売した Next Gen Foods社。ここでは、そんな同社の設立までの道のりを紹介する。


アジアの植物性代替肉市場の盛り上がり

ドイツで植物性代替肉のブランドLike Meatを設立しCEOを務めた経験を持つティモ・レッカー(Timo Recker)と、シンガポールのCountry Foods社でゼネラルマネージャーを務めていたアンドレ・メネゼス(Andre Menezes)。食品業界のベテランである2人は、EDBのコーポレート・ベンチャー部門とシンガポールの投資会社Temasekが主催する、起業家やベンチャー企業を支援するためのベンチャー・インキュベーション・スプリントで出会い、「食を通じてより持続可能な世界を創造する」というビジョンを共有した。そして2人は、食品技術のスタートアップ企業であるNext Gen Foods社を創設、ティモ・レッカーがCEO、アンドレ・メネゼスがCOOを務めることとなる。シンガポールで出会い、創業し、資金調達に成功した2人にとって、シンガポールはアジアをはじめとする世界各地への足掛かりとなったのだ。

Next Gen Foods社にとって最初の市場は当然ながらアジアである。創業者である2人は、食品業界での経験からこの地域の成長の可能性を感じていたという。アンドレ・メネゼスCOOは「アジアは、植物性タンパク質の普及という点では欧米に遅れているかもしれませんが、若い世代を中心に代替肉に対する強い要望があり、アジアの食品業界ではすでに変化が始まっています」と語る。

2人にとって、代替鶏肉に特化した製品を発売することは自然な選択だった。ティモ・レッカーCEOは次のように語っている。「植物性の代替豚肉や代替牛肉はあっても、日常の食生活で当たり前のように使われている鶏肉には注目されていませんでした。消費者の食体験を再現することで、新しいものを市場に提供することができるのです。」

 

アジアの中心で本社を選ぶ

Next Gen Foods社が、本社をシンガポールに設立したのには理由がある。安全性、透明性、ビジネスのしやすさ、デジタルコネクション、各社の地域本部が集中していることなど、さまざまな複合的な要素からスケールアップに最適な場所だと考えたからだ。アンドレ・メネゼスは「私たちは、シンガポールがフードテックのシリコンバレーになると確信しています。まだまだ発展途上ではありますが、エコシステムの多くの部分はすでに確立されています。研究開発で協力できる多くの多国籍企業があり、さまざまな消費者グループやシェフ、レストランで製品をテストすることができます」と語る。また、2人はシンガポールの経済的な要素に加え、スタートアップ企業への資金提供やサポートにも感銘を受けたと言う。ティモ・レッカーは「この国の資金調達環境は非常にグローバルなもので、あらゆるステージにさまざまな投資家が存在しています。アイデアの段階でも、多くのアクセラレータを見つけることができ、シードラウンドで調達した金額は、シンガポールが非常に先進的な環境であることを示しています」と語っている。

Next Gen Foods社のスタートアップの道のり

エコシステムにおける豊富な戦略的パートナーや投資家のおかげで、Next Gen Foods社はスムーズにビジネスが発進できた。

ベンチャーキャピタルであるK3 Ventures社を通じ、シャングリラ・グループのシェフの協力を得て発売前に植物性チキンをさまざまな料理でテストを行うこともできたのだ。アンドレ・メネゼスは「K3 Venturesをはじめとするパートナーは、地元や地域の状況、投資シーンに関してアドバイスをしてくれました」と語る。加えてティモ・レッカーは「私たちはここシンガポールで簡単に法人化することができましたし、シンガポール政府から実践的なサポートを受けることができました。これは世界的に見ても珍しいことです。」と語り、Next Gen Foods社の設立と拡大にはEDBのサポートがあったことを例に挙げて、公共部門のパートナーも欠かせないことを強調した。

 

今後の展開

Next Gen Foods社は、アジアでのパートナーシップを活用してアジア全域に事業を拡大するとともに、研究開発能力を高めて新しいブランドやカテゴリーの製品を生み出していく考えだ。ティモ・レッカーは今後を見据え次のように語っている。「私たちのモチベーションは、子どもたちや次の世代のために、この地球をより良い場所にすることです。」

植物性代替鶏肉ブランドTiNDLEについてのお問い合わせ先:TiNDLE
hello@tindle.com

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