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「AI ドリブン」ビジネスに向け東南アジア経済の成長拠点に

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製造業からサービス業、物流業まで、シンガポールではAIに投資するスタートアップ企業や多国籍企業が増えている。シンガポール経済開発庁(EDB)のチャン・イーミン(Chan Ih-Ming)副次官が、“世界で最もAIを活用する経済国”を目指すシンガポールの取り組みを紹介する。

​画像提供: Channel News Asia

​​Google、OpenAI、NVIDIAも進出するシンガポールの​AIエコシステム 

​​AIへの投資が増えるシンガポールでは、1,100のスタートアップ企業と150のAI​​研究開発チーム​​が活動する。生成AI「ChatGPT」を開発したOpenAIも、​​シンガポールにオフィスを開設​​することを発表​​した​​。​ 

 ​​一方で、シンガポール政府はAIの普及を加速させる目的で、100社の大手企業と協力して、AIのための組織「​​センター・オブ・エクセレンス​​(CoE)」を設立する計画だ。製造業からサービス業、物流まであらゆる産業にまたがるCoEは、雇用と経済成長を生み出すだけでなく、シンガポール企業にAIを浸透させるために不可欠なのである。​ 

​シンガポールでは​​現在、Googleの「AI Trailblazers」プログラム、シンガポール工科大学(SIT)と半導体メーカーNVIDIAの「AIセンター」、Amazonの「​​アマゾン ウェブ サービス(AWS)​​」、さらにOracle、Microsoft、Metaなど経済全体でAIの普及を推進し、AI人材を育成するための大規模な取り組みを次々と展開している。​
 

AI企業がシンガポールでチームを立ち上げるのは当然の流れ」と語るチャン副次官​ 

こうしたなか、​チャン・イーミン副次官​がシンガポール・メディアMediacorpのインタビューに応じ、AIエコシステムへの投資を続けるシンガポールで、AIスタートアップがいかにイノベーションを推進し、大手多国籍企業がビジネスにインパクトを与えるためにどのようにAIを活用しているかについて語った。

—なぜ、シンガポールにAI企業の進出が増えているのでしょうか。 

​​多くの企業は、顧客を探しています。また、重要な人材の雇用や、信頼できるビジネス・エコシステムも求めています。​AI企業​の多くがシンガポールに集まるのは、シンガポールが“自信を持って長期的に大きな投資を行うことができる場所”だからです。​ 

​​シンガポール政府はAI分野に力を入れており、今年も増額した資金を投入しています。収益については、シンガポールにある多国籍企業の多くが、AIスタートアップ企業の潜在的な顧客となっています。多国籍企業はシンガポールを拠点に地域を統括しているので、彼らが顧客を探すために集まるのは自然なことです。さらに、シンガポールには優れた教育機関があり、グローバル人材に門戸を開いているため、ここでチームを立ち上げるのは当然の流れなのです。​ 
 

—これはトレンドの始まりなのでしょうか。 

​​私は、まだ初期段階にあると思います。OpenAIが普及させたChatGPTのような生成AIモデルが登場したのは、2022年11月。まだ2年も経っていません(当時)。つまり、この潮流は始まったばかりなのです。​ 

​​一方で、それ以来、二つの主要な分野にエネルギーが集中していることが見て取れるようになりました。一つは、OpenAIなど、AIのイノベーションを推進するスタートアップ企業です。当然ながら、それらの企業のいくつかは、シンガポールでのビジネスチャンスに注目しています。もう一つは、AIを活用して既存のビジネスにインパクトを与えようとしている大手多国籍企業です。 例えば、世界経済フォーラム(WEF)は、シンガポールのトゥアスという地区にあるコカ・コーラの製造工場を、「ライトハウス工場」に認定したと発表しました。これは、AIの活用で工場の生産性と処理能力を向上させている、世界をリードする施設として認められたことを意味します。​ 
 

—AIは非常に広い概念で、あらゆる分野を含んでいますが、今後シンガポールに進出する大手AI企業は細分化されていくのでしょうか。 

生成AIには大きな期待が寄せられていると思います。しかしAIはそれにとどまらず、本質的には、データを効率的に活用して重要な意思決定を行い、実世界にインパクトを与えるものなのです。そのため私たちは、製造業であれ金融サービス業であれ、業界にとらわれることなく、AIでビジネスにインパクトを与えようとする企業と協力することに重点を置いています。 

例えば、アメリカン・エキスプレスは、AIと機械学習を活用したマーケティングやサービスモデルの開発を行う「意思決定科学チーム」をシンガポールに配置しています。そのチームは、マーケティングや営業支援、ソリューションの分野で生成AIを活用し始めています。今後、ますますこのような動きが増えていくと思います。 
 

—これらの動きはシンガポールに、経済や社会の変化が広がるトリクルダウン効果やドミノ効果をどのような形でもたらすのでしょうか。また、経済的な波及効果としてはどのようなものが予想されますか。 

非常に直接的な恩恵がいくつかあります。まず、AI企業の進出が増えれば、特にエンジニアリングや技術分野において、魅力的な雇用機会が生まれることになります。 

次に、シンガポールに拠点を置く大企業、中小企業、多国籍企業、地元企業などすべての企業にとって、AIを導入する機会、​自社のビジネスにAIを活用する機会​が広がります。AIは競争力を高めるためのテクノロジーであり、これが企業レベルでのメリットです。 

また、研究機関にも大きなメリットがあります。シンガポール国立大学(NUS)、南洋理工大学(NTU)、シンガポール工科大学(SIT)なども、AI分野の研究に関わっています。SITは今年初め、AIの革新を支える半導体チップの多くを製造しているNVIDIAと協定を結びました。そして彼らは、応用研究に焦点を当てたAIセンターを設立しました。 NUS は、シンガポールで配車アプリサービスを提供しているGrabなどの企業と協力し、交通の効率性や信頼性の向上にAIを活用しています。 

そのように恩恵はかなり多面的だと思います。私たちは“AIがどのように産業を再構築していくのか”を最前列で見ることができるのです。 
 

—新たな投資では、生成 AIや、さらに活用領域を広めた応用AIに対する割合が増えているのでしょうか。 

それについて語るのはまだ早いと思います。先ほど申し上げたように、生成AIという言葉が使われ始めて、まだ2年ほどです。さまざまな推計がありますが、この2年間で誕生した生成AIに関わる企業は、数百社にのぼると見ていいでしょう。しかし、数以上に重要なのが、現実世界にどのようなインパクトを生み出しているかということです。 

製造業や金融サービスについても少し触れましたが、この分野に注目している地元企業もたくさんあります。ヘルスケア分野では、シンガポールでスタートしたBot MDという会社が、AIを使って臨床医のためのシステムを構築し、医師の医療活動を支援しています。そのように、エキサイティングな取り組みはまだまだ始まったばかりなのです。 
 

—シンガポールは世界のAIの中心地になれますか。 

私たちは、成長地域である東南アジアに位置しているという非常にユニークな立場にあります。東南アジアのデジタル経済は、シンガポール政府系の投資会社であるTemasekとGoogle、コンサルティングファームのBainが発表したレポート「e-Conomy SEA」によると、2030年までに約1兆米ドル(約153兆円)の市場規模に成長すると予想されています。 

そしてAIは明らかに、デジタル経済の発展を後押しする存在として機能しており、ここには大きなチャンスがあります。私たちは、目の前にあるこのような機会を企業が追求することを奨励したい。つまり、競争ではなく、チャンスに目を向けたいと思っています。  

*本稿は、EDB“For AI-driven businesses, Singapore is a launchpad for growth in Southeast Asia”を翻訳・再構成したものです。 

*1米ドル=約153円(2024年11月10日時点) 

主力産業一覧

主力産業一覧
  • 「未来の航空宇宙都市」と呼ばれるシンガポールは、130社を超える航空宇宙業界の企業を擁し、アジア最大級で最も多様なエコシステムを誇ります。一流企業や宇宙産業スタートアップ企業をはじめとして成長を続ける企業が拠点を置いています。

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  • シンガポールは、アジア市場への玄関口であり、世界トップクラスの消費者向け企業の多くが、環太平洋の拠点としてシンガポールを活用しています。

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  • シンガポールは、東西のクリエイティブカルチャーが交差する場所であり、拡大を続けるこの地域の消費者基盤へ向けて開かれた扉でもあります。世界的ブランドが、地域統括会社を構えており、トップクラスのクリエイティブな企業がシンガポールを拠点としています。

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  • 今日、主要なガジェットにはシンガポール製の部品が使用されています。エレクトロニクス産業の一流企業は、シンガポールで未来を設計しています。

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  • 精製、オレフィン製造、化学製品製造、ビジネスと革新力が強力に融合するシンガポールは、世界最先端のエネルギーと化学産業のハブに数えられています。100社を超えるグローバル化学企業が主要な事業を当地に構えています。

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  • アジアのデジタルの中心都市として、シンガポールは情報通信技術 (ICT) 企業が選ぶ拠点となっています。世界クラスのインフラ、人材、活気のあるパートナーのエコシステムを提供しています。一流企業と連携して、最先端の技術とソリューションを開発し、シンガポールのビジョンであるスマートネーションと地域および世界の市場を支えています。

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  • アジアの流通のハブとして、当地域内外への世界クラスのコネクティビティを提供します。安全で効率的なロジスティクスと、サプライチェーン管理ハブとしての妥当性を以て、シンガポールは地域の境界を超えた取引と消費に貢献しています。

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  • シンガポールは、医療技術企業がこの地域で成長するための戦略的な拠点です。今日、多くの多国籍医療技術企業がシンガポールを拠点として、地域本社機能や製造、研究開発を行なっています。

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  • 資源豊かなアジアの中心に位置するシンガポールは、農産物、金属、鉱物のグローバルハブです。我が国のビジネス環境は、強力な金融、サプライチェーン管理、技術力を以て、世界をリードする企業を引き付けています。

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  • シンガポールは、アジアでも主要な石油 ・ ガス (O&G) 装置とサービスのハブであり、3,000社を超える海洋・オフショアエンジニアリング (M&OE) の会社があります。世界クラスの機能と優れたコネクティビティは、アジアの強力な成長の可能性に着目する多くの企業をシンガポールに誘引しています。

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  • シンガポールが有する優れた人材、強い生産能力、研究開発のエコシステムは、製薬やバイオテクノロジー企業を誘引しています。企業はシンガポールから世界中の人々に薬を提供し、アジア市場の成長を担っています。

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  • シンガポールの洗練された精密工学(PE)の能力と先進の製造技術で主要分野である高度な製造な地域ハブとしての強みを反映しています。

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  • シンガポールは、プロフェッショナル・サービス企業に最適なハブであり、国際的な労働力と信頼できる規制と枠組みを提供します。

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  • アジアは世界的な都市化のメガトレンドの中心であり、人口集中や公害、環境悪化などの都市問題の軽減を目指して、各国政府はスマートで持続可能なソリューションの開発を推進しています。大企業のいくつかはシンガポールを拠点として、アジアのために持続可能なソリューションを商業化すべく、革新、試行、連携を進めています。

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