COT-Labは、竹中工務店の技術開発部門と産官学が連携し、技術開発を幅広く推進することを目的に2020年に創設された。第1号拠点は東京の「COT-Lab大手町」で、22年には海外初拠点となる「COT-Labシンガポール」を開設。現在は日本国内に3拠点、海外で2拠点を展開している。
それぞれの拠点で活動の主要テーマが定められている。社会実装先進国であるシンガポールではデジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーントランスフォーメーション(GX)に主眼を置き、「海外での産学連携による共創」「東南アジアでの技術実証」を推進している。現在の具体的なトピックは、「バイオガス発電システム」「南洋材を利用した大規模集成材(MET)」「建物や街での健康で安心な生活(健康建築=『健築』)」の3つだ。
バイオガス発電では、生ごみからつくられるメタンガスを商用・オフィス施設内の発電に利用する竹中工務店の独自技術「メタファーム」のシンガポールへの展開を検討している。現時点では、同国のベンチャーキャピタル(VC)や南洋理工大学(NTU)などと共同で実証プロジェクトを推進中だ。
COT-Labシンガポールの小椎尾龍介氏は「日本では(大阪の超高層ビル)『あべのハルカス』で、既に同システムの導入実績がある。ただシンガポールでは生ごみの分別がないため、フードコートや屋台街に導入するには飲食店の協力を仰ぐなど、さまざまな障壁を取り除く必要がある」と語った。
シンガポール国立大学(NUS)デザイン・環境学部建築学科の奥田真也准教授とは共同で、現地の気候に適した大規模集成材の研究を進めている。シンガポールは建築材料や工法などで欧州規格を採用している。
小椎尾氏は「これまでシンガポールで建てられた大小約20件の大規模集成材建築で使用している材料は、欧州規格に適合する必要から全て欧州から輸入されている」と説明。欧州の木材は現地の気候に適しているとはいえず、長距離運搬も課題であると付け加えた。
COT-Labのネットワーク拡大
『健築』は、「健康に寄与する建築」という竹中工務店の独自コンセプトの登録商標だ。日本で数カ所の自治体と共同して高齢者向け施設や集会所、市庁舎などの施設の設計施工に具体的な要素を取り入れながら実証実験を行っている。
シンガポールではシンガポール国立大学の清田英巳准教授が代表を務めるNPO、Ibashoのメンバーと施設プログラムの研究などを共同で始めており、その一環として、いろいろな世代が集い交流を通じて共生を促進する場としての「Ibashoシンガポール」の設計施工を竹中工務店が担当した。竹中工務店は現在、『健築』の理念を日本とシンガポールで応用する可能性を探っている。
竹中工務店はシンガポールでのCOT-Labの体制を25年から強化し、活動をさらに本格化させる。シンガポールをハブとして日本国内のCOT-Labや米国、欧州の共創パートナーと連携しながらネットワークを拡大したい考えだ。
※「下」に続く。
出典:NNA 2024年12月19日付け記事
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