より健康的な未来を形作っている、シンガポールのヘルスケアイノベーション

シンガポールの医療ビジネスは、生物医学、メドテック、デジタル医療、コンシューマヘルスの各分野において、世界を悩ませてきた課題に取り組んでいます。病気の研究、新しい技術、革新的実践により、心臓病、ウイルス、失明など、あまり知られていない自己免疫疾患についても医療ソリューションを変革しています。 

Us2.AI は AI アルゴリズムを使用して、心臓専門医のように心臓の画像を読み取ります。中外ファーマボディリサーチは、独自の抗体テクノロジーを用いて、一般的ではない自己免疫疾患を含む炎症性疾患、がん、代謝性疾患などの治療薬を開発しています。EyRISは、ディープラーニング技術を利用して、糖尿病性失明を防いでいます。また、GenScript Biotech Corporationの先進的な遺伝子合成技術は、わずか数日で DNA 構築物を提供し、新しいワクチンの開発をスピードアップしています。   

シンガポールを拠点とする以下の企業のチェンジメーカーたちが、世界を良くするという夢について語っています。Us2.AI の共同創業者、キャロライン・ラム（Carolyn Lam）博士、中外ファーマボディリサーチの CEO 兼リサーチ責任者、嶋田英輝博士、EyRISの CEO、ライ・テイク・キン（Lai Teik Kin）氏、GenScriptのシンガポール生産オペレーション責任者、リ・エンホウ（Li Yanfeng）氏 のストーリーを聞いてみましょう。 

（以下、敬称略） 

世界に変化をもたらす貴社の大きな夢はどのようなものですか？ 

ラム：医療における AI は、恵まれない人々の医療へのアクセスと質を向上させることができます。すべての人の心臓医療へのアクセスを向上させ、心血管疾患との闘いにある不平等に対処するために、当社のソリューションを使用したいと考えています。 

嶋田：満たされていない医療ニーズに対応する革新的な医薬を作って、患者が救命薬をより利用しやすくすることで、医療を見直すという大きな夢を持っています。 

ライ：シンガポールから、世界中の失明と視力障害を防止したいと考えています。世界の糖尿病患者数は 2045 年までに 7 億人になると予測され、訓練を受けた眼科医が一般的に先進国に集中しているため、低中所得国の患者へのスクリーニングを増やすことを目標としています。   '

リ：未知の感染症「Disease X」は打ち勝つことのできないものではありません。遺伝子とタンパク質は、ワクチン、創薬、治療、診断ツールの構成要素です。テクノロジーと研究により、新しいイノベーションを生み出し、プロトタイプワクチンの開発を迅速化して、まだ存在しない新たな脅威から世界を守ることができます。 

その夢をどのように推進して、医療で満たされていない大きなニーズに対応してきましたか？ 

ラム：私は自分のことを偶然の起業家だと思っています。何年も勉強して心臓学の教授なった私が技術系新興企業を経営することになるとは思いもよりませんでした。しかし、このような背景があったからこそ、歴史的に男性優先の研究開発が行われていることに気づいたのです。そのため Us2.ai では、男性からだけでなく女性からの情報も盛り込むことで、製品の安全性を確保しています。テクノロジーとイノベーションにより、医療をよりオープンでインクルーシブな、患者中心のものにすることができます。 

嶋田：世界的には、がん、炎症性疾患、代謝性疾患など多くの病気の薬物治療がいまだに不足しています。当社はこのような満たされていない臨床ニーズに対処するために、新しい抗体テクノロジーにより、創薬可能なターゲットを拡大し、独自の治療処置を作り出すことができます。中外で、特定の自己免疫疾患を治療するための臨床試験の最終段階のパイプラインに含まれる薬剤の 1 つが、クロバリマブ（SKY59）です。この種の医薬品としてはシンガポールで初の世界承認となることが期待されています。 

ライ：糖尿病性網膜症は、糖尿病がもたらす大きな影響の 1 つです。世界の働き盛りの成人の視力低下の主原因であり、失明に至る場合もあります。早期スクリーニングにより、糖尿病患者の視力低下や障害が 47 % 減少しますが、その手順は面倒で時間がかかります。そのため、私たちはシンガポール国立眼科センター（Singapore National Eye Centre）、シンガポール国立大学コンピューティング学部（National University of Singapore School of Computing）と提携して、SELENA+（シンガポール眼病変分析装置）の開発、強化、商業化を行っています。この装置は、緑内障の疑い、加齢黄斑変性症、糖尿病網膜症などの眼疾患を検知するための、ディープラーニングテクノロジーを使用するソフトウェア医療機器で、8分30秒以内の診断を可能にします。   

リ：COVID-19 は、疫病を効果的に予防し、対応するための疾病研究の重要性を示しました。2020 年初頭、ジェンスクリプトの研究者、デュークシンガポール国立医科大学（Duke-NUS Medical School）、シンガポール科学技術研究庁（A*STAR）は、SARS-COV-2 ワクチンの開発で、重要な役割を果たしました。中和抗体を 1 時間で測定できる、世界初の「急速スマート試験キット」である cPass™ を発明したのです。これにより、世界中の多くのワクチン開発者が、このパンデミックに対抗できるようになりました。

より健康な世界を作ることの原動力となっているのは何ですか？

嶋田：科学者として私は個人的に、私たちの仕事は社会を良くするために自分の能力を最大限に活用することだと考えています。この確かな使命感が、仕事で創薬研究の分野に専念する力となってきました。 

ラム：私は、他の女性を支援して応援することに情熱を注いでいます。医師、教授、治験担当者になりたい女性や、創業者になるために開業を考えている女性、そして、健康のための支援を必要としていても、その声を聞いてもらえない女性などです。 

ライ：私のチームは、前向きな変化の一部になりたいと考えています。これは、ディープテクノロジーによって医療提供を変革したいという熱意によるものです。医療は効率的で、手頃で、包括的であることが可能で、そうあるべきであると思います。

シンガポールにいることは、より良い世界を作るための計画をどのように加速しましたか？ 

リ：シンガポールの活気のある好調なバイオテクノロジーエコシステムは、ジェンスクリプトが世界に向けて、革新的で効率的、効果的な医療ソリューションを成長させ、拡大するのに役立っています。cPass の世界的な成功は、この都市国家に、研究者やパートナーの魅力的な人材プールと強固な製造能力があることを証明しています。   

ラム：シンガポールはビジネスに最適です。政府は、ディープテクノロジーの新興企業に力を入れてきました。また、継続的なサポートにより、当社は迅速に成長できています。最先端の企業からリソースに制約のあるコミュニティまで、すべての人が高品質で一貫性のある安価な心臓検査（心エコー検査）に平等にアクセスできる未来を築くという望みも、ここを拠点にしていることで実現しています。 

嶋田：シンガポールの強力なインフラストラクチャと、高度な訓練を受けた多国籍科学者の人材を活用することは、この地域での当社の存在感を確立して強化するうえで極めて重要です。EDB や A*STARなどの政府機関の強力なサポートも、世界中の患者の生活に違いをもたらす画期的な医薬の開発に役立っています。 

あなたを最もインスパイアするのは、シンガポールの何でしょうか？

ライ：技術の採用とイノベーションにおいて、シンガポールはどのような規模の企業にも認定されるリーダーです。実験や学習が奨励されサポートされている環境にいることを非常に幸運だと思っています。この環境が、世界中であまり見られないたくさんの機会を生み出しています。    

リ：オープンで協力的で革新的な結果として、医療分野で自身の力を超えるような活動をして、パンデミックや気候変動などのグローバルな問題に取り組むシンガポールの能力に、インスパイアされています。