魅力① 強固なインフラ
国土は決して広くないが、シンガポールにはたくさんの商業・産業・イノベーション地区が整備されている。
例えば、アジアのインダストリー4.0推進の中心地であるジュロンイノベーション地区(JID)は、先進的な製造エコシステムを持つ。メーカーはそれを活用することで、新製品の試作から試験、生産立ち上げ、流通まで一貫して行うことが可能だ。
牧野フライス製作所のシンガポール現地法人であるマキノ・アジアは、JIDのエコシステムを活用するとともに、シンガポールの名門国立大学の南洋理工大学とのコラボレーションを通じて、研究時間を1年短縮。設備投資を100万SGD(約1億1,000万円)近くも節約した。
ほかにも、先進的なデジタル技術を活用したシンガポール初のスマートビジネス地区「プンゴルデジタル地区(PDD)」や、高付加価値・知識集約型の活動に特化した6つの工業団地があり、メーカーのさまざまなニーズに応えている。
魅力② 高度なスキルと適応力を持った人材
シンガポールには高付加価値な製品を生産するために必要な、高度なスキルと適応力を持つ人材が豊富だ。というのも、シンガポール政府と企業は共同で人材育成のためのプログラムをいくつも実施し、労働者が継続的にスキルアップできるように後押ししているからである。
その一つ「SkillsFuture Singapore」では、先進製造やサイバーセキュリティなど8つの分野で400以上のコースを新設し、スキルトレーニングに年間12億SGD(約1,320億円/2021年)を投資。スキル向上のための研修やトレーニングを労働者に提供している。
そうした努力が実り、ビジネススクールのINSEADによる人材競争力に関する国際調査レポート「The Global Talent Competitiveness Index」(2023)では、「高度なスキル」と「人材影響力」の項目で世界1位の評価を受けた。
魅力③ 大手グローバルメーカーの広範なネットワーク
シンガポールは国を挙げてインダストリー4.0を推進しているため、メーカーが最先端技術の利用や開発を行いやすい環境が整っている。そのため各企業で、オートメーション、先進の分析技術、データ制御のシステムなど最先端ソリューションの導入が進み、生産性向上と成長を果たしてきた。
そうしてシンガポールの製造業全体で高度化が進んだ結果、2020年には医薬品、電気機械、科学機器などのハイテク製品で世界5位の輸出国になった。
さらに、インダストリー4.0のテクノロジーを先行して導入した内外のメーカーが、その専門知識やノウハウを他のメーカーに共有するなど、国内の製造エコシステムを活気づけている。そのことにより、国内製造業の成長が促されるとともにバリューチェーン全体の底上げが実現している。シンガポールは、数多くの大手メーカーがネットワークを張り巡らせる製造業の一大拠点となっている。
魅力④ テクノロジーとイノベーションにおける世界とアジアの交差点
シンガポールには4,000社を超えるテック系スタートアップ企業が存在する。そして、企業間のパートナーシップを仲介するプラットフォームが豊富だ。そのため、ITソリューションを求めるグローバルメーカーは、最先端テクノロジーの開発によりソリューションを提供するスタートアップ企業とのつながりを容易に持つことができる。
また、シンガポールにはサービス提供を行うテクノロジープロバイダーおよびソリューションプロバイダーが多数存在する。そのため、例えばオムロンなどソリューションを開発する企業は、プロバイダーとの連携により、国内およびアジア太平洋地域内のクライアントにカスタムされたソリューションをスムーズに提供できている。
さらに、研究開発エコシステムも発展している。資金提供や官民連携の促進を行う国家プログラム「National Robotics Programme(NRP)」は、ロボティクス技術を研究開発する企業を支援。科学技術研究の中心的組織であるシンガポール科学技術研究庁(A*STAR)が主導する「Advanced Remanufacturing and Technology Centre(ARTC)」は、インダストリー4.0のモデル工場を設立するなどして、先進製造に関する研究の産業への応用を促進している。
そうした環境が整うシンガポールには、デジタルトランスフォーメーションを通じて生産性の向上を目指すメーカーが数多く集まり、業界全体が活気を帯びている。
魅力⑤ アジア市場との強いつながり
27の自由貿易協定(FTA)を締結し、120カ国以上、およそ600の港と結ばれているシンガポールは、アジア市場そして世界市場と強固につながっている。
そのため、例えば、地域統括本部をシンガポールに置き、生産子会社を価格競争力のあるASEAN諸国に置くビジネスモデル「SG+ Twinning Model」を採用すれば、シンガポールの有利なビジネス環境と、マレーシアのジョホール、インドネシアのバタム島・ビンタン島・カリムン島(BBK)など近隣にある製造拠点の、双方の強みを活用することができる。
また、シンガポール経済開発庁(EDB)と東南アジアで工業団地を運営する民間企業数社による連携「東南アジア製造業同盟(SMA)」は、メーカーの生産拠点の分散化を支援。各種優遇措置が設けられ、アジア太平洋地域内の事業拡大に活用することができる。
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